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第2号(令和01年) 栃木県奨励品種の優良な種苗の安定供給に関する条例案に関する陳情

受理番号 第2号
(令和01年)
受理年月日 令和元年9月9日
付託委員会 農林環境委員会 委員会付託年月日 令和元年9月26日
議決結果 不採択 議決年月日 令和元年10月9日
紹介議員
第2号(令和01年)
  栃木県奨励品種の優良な種苗の安定供給に関する条例案に関する陳情

要  旨
1 陳情の趣旨
  栃木県奨励品種の優良な種苗の安定供給に関する条例案を採択するに際しては、原案について次の通り修正されることを求める。
 (1)条例の目的において、主要農作物の優良な種子の安定的な供給を図ることを明記すること。
 (2)種苗等生産計画については、県が責任をもって策定すること。
 (3)原種及び原原種の生産については、県以外の第三者を生産者と指定した場合であっても、あくまで県の責任において生産すること。
 (4)種子の生産ほ場の指定、ほ場審査、生産物審査については、従来通り県が実施すること。
 (5)種子行政の適正・公正を担保するために、有識者、農業者、消費者等から構成される種子行政に関する審議会を設置すること
 (6)以上(1)ないし(5)の修正に整合するよう条文を調整すること。

2 陳情の理由
 (1)主要農作物種子法廃止と11道県における種子条例の制定
  @ 主要農作物種子法(以下種子法という)は1952(昭和27)年に制定されたが、2017(平成29)年2月、通常国会において突如、内閣から種子法廃止法案が提出され、同国会の会期内で種子法廃止法が成立するに至った。
    同年3月から衆議院農林水産委員会に付託され、その後同月23日の約5時間の審議を経て同月28日に衆議院を通過し、参議院でも同年4月11日の5時間の審議と同月13日の2時間の参考人質疑を経て同月14日に参院本会議で可決し、わずか10時間程度の審議で、種子法そのものが廃止となることが決定し、種子法廃止法の施行日である2018(平成30)年4月1日をもって、種子法は廃止された。
  A 種子法は、主要農作物(稲、大麦、裸麦、小麦及び大豆)の優良な種子の生産及び普及を促進するため、種子の生産について「ほ場審査その他の措置」を行うことを目的としていた(同法第1条)。
    種子法に基づき、各都道府県は、試験研究の体制を整え、地域に合う品種を開発して奨励品種を指定し(同法第8条)、さらには原原種や原種を生産するとともに(同法第7条)、種子の生産ほ場(圃場)の指定(同法第3条)、ほ場や生産された種子の審査(同法第4条)、遺伝資源の保存などを行ってきた。国、都道府県、農協系統組織が主導して、地域ごとの安全な種子の生産・流通・管理を独占的に担ってきたものである。
    これによって、農家は優良な種子を安価で購入し、安定的な農業経営を行うことができ、また、一般消費者も安価で優良な主要農作物の提供を受けてきた。
  B ところが、TPP協定が承認(平成28年12月)される約2か月前の2016(平成28)年10月6日の規制改革推進会議農業ワーキンググループ第4回会合では、「総合的なTPP関連政策大綱に基づく『生産者の所得向上につながる生産資材価格形成の仕組みの見直し』及び『生産者が有利な条件で安定取引を行うことができる流通・加工の業界構造の確立』に向けた施策の具体化方向」の中で「戦略物資である種子・種苗については、国は、国家戦略・知財戦略として、民間活力を最大限に活用した開発・供給体制を構築する。そうした体制整備に資するため、地方公共団体中心のシステムで、民間の品種開発意欲を阻害している主要農作物種子法は廃止する」ことを指摘した。この種子法廃止の理由と結論が、そのまま同年11月25日に自由民主党「農林・食料調査会」と公明党「農林水産業活性化調査会」がまとめた農業競争力強化プログラムに盛り込まれ、内閣総理大臣を本部長、内閣官房長官と農林水産大臣を副本部長として内閣に設置されている農林水産業・地域の活力創造本部が同年12月に決定した「農林水産業・地域の活力創造プラン」の中で「更なる農業の競争力強化のための改革」に関して、<展開する施策>として「農業競争力強化プログラム」を参照するとされたことにより、種子法廃止の方針が正式に決定され、翌年2月には国会に種子法廃止法案が提出されたのである。
  C このように、種子法廃止は、1952年から65年以上に亙って日本農業を支えてきた国と都道府県が責任をもって主要農作物の優良かつ安価な種子を生産し安定的に提供するシステムを壊して民間に委ねようとするものであるが、その民間は何ら国民の食料安全保障に対して責任を負うことはなく、営利の追求のために種子生産を行うのである。
    このようなことがまかり通るならば、農業者が都道府県から優良かつ安価な種子の提供を受けられなくなるだけではなく、消費者も農業者が都道府県から優良な種子の提供を受けて生産する優良かつ安全安心な農作物を購入して消費する機会を奪われてしまうことから、種子法によって構築されてきた都道府県が責任をもって種子を生産し安定的に供給するシステムを維持するため種子法に代わる条例を制定しようという運動が各地で展開され、その運動に応えた道県が種子条例を制定しているのである。
 (2)11道県で制定された種子条例の内容と栃木県条例案の比較
  @ 種子法が廃止されてから現在までに11道県(北海道、山形県、埼玉県、新潟県、富山県、長野県、福井県、岐阜県、兵庫県、鳥取県、宮崎県)で種子条例が制定されており、前述したとおり、条例制定の目的は種子法によって構築・維持されてきた都道府県が責任を持つ種子生産・供給システムを種子法廃止後も維持するためのものであるから、当然システムの中核をなす事項についての規定を置いており、11道県の各条例は細かい点で多少の差異はあっても、基本的な部分ではほとんど差異がない。
    しかし、栃木県の条例案は先行した11道県の条例と大きな違いを有している。私たち「種子の会 とちぎ」では、11道県における種子条例と栃木県条例案について比較対象を行い、別紙の「全国種子条例対照表」を作成した。その結果、栃木県条例案の主要な規定に関して、11道県の条例とは大きな違いがあることが明白になったのである。
  A 目的について
    11道県の条例の目的を集約すると
    「主要農作物(稲、大麦、裸麦、小麦及び大豆)(等)の(優良な)種子の生産、普及、安定的な供給に必要な事項を定めることにより、主要農作物の品質確保と安定的供給を図る」となるのに対して、栃木県の条例案は、
    「奨励品種の優良な種苗(種苗法(平成10年法律第83号)第2条第3項に規定する種苗をいう。以下同じ。)の安定的な供給に関し、県の責務及び種苗生産等計画策定者等の役割を明らかにするとともに、奨励品種の優良な種苗の安定的な供給に関し必要な事項を定めることにより、本県の農作物の競争力の強化に資する奨励品種の優良な種苗の安定的な供給の促進を図り、もって本県の農業の持続的な発展に寄与する。」として、種子ではなく、種苗を対象とする条例案になっている。
    種子法が廃止になったために、都道府県レベルで責任をもって主要農作物の優良な種子の安定的供給を図る従来のシステムを維持することを前提として11道県の条例は目的を規定しているのに対し、主要農作物の種子の問題に全く言及せずに種苗法の枠組を前提とした目的を規定している栃木県の条例案は11道県の条例と比べて異質である。
  B 種子計画について
    長野県、鳥取県を除く9道県の条例の種子計画に関する規定は、知事あるいは県が種子計画の策定者であることに例外がなく、種子計画には、種子の需給見通し、生産量ほか、種子生産に関し必要な事項を定めることになっている。
    鳥取県の条例は、原則知事が種子計画を定めるが、知事が指定種子管理団体を指定したときには、指定種子管理団体が指定された特定農産物の種類について種子計画を策定するとされている。
    長野県の条例は、知事が指定する種子管理団体が県と協議の上で種子計画を策定するとされている。
    栃木県の条例案は、知事が指定する種苗生産等計画策定者が知事とあらかじめ協議して種苗等生産計画を策定するとされており、ほぼ長野県と同様な規定になっている。
    都道府県が責任をもって主要農作物の優良な種子の生産と安定的供給を図る従来のシステムでは、種子法自体に都道府県の種子計画策定の規定が置かれていなくても農林水産事務次官依命通知である主要農作物種子制度運用基本要綱で、都道府県知事が都道府県種子計画を策定することとされ、「ア 主要農作物の種子の種類別の需給の見通しに関する事項、イ 都道府県が種子法第3条第1項の規定に基づき行う主要農作物の種類別の指定種子生産ほ場の指定に関する事項、ウ 都道府県が種子法第7条第1項の規定に基づき行う主要農作物の原種及び原原種(以下「原種等」という。)の生産に関する事項、エ 都道府県が種子法第7条第2項の規定に基づき行う主要農作物の種類別の指定原種ほ及び指定原原種ほ(以下「指定原種ほ等」という。)の指定に関する事項、オ その他主要農作物の種子の安定的な供給に関する事項」を定めることになっていた。したがって、従来の枠組みを踏襲するのであれば当然知事ないし県が種子計画を策定しなければならないのであり、知事や県が計画の策定主体ではないという規定を置いた長野県の条例と栃木県の条例案は極めて異質と言わざるを得ない。
  C 原種及び原原種の生産について
    11道県のうち長野県を除く10道県の条例は、道県が原種及び原原種の生産を行うとし、そのうち、山形県、新潟県、富山県、福井県、鳥取県については、知事は知事以外の者が経営するほ場において、原種または原原種が適正かつ確実に生産されると認める場合には、当該ほ場を指定原種または指定原原種ほ場として指定できるとしている。
    長野県の条例は、原原種は県が生産し、原種は種子管理団体が行うとしている。
    栃木県の条例案は、県が奨励品種の原種または原原種並びに原苗及び原原苗(以下「原種等」という)を生産するとしているが、知事は種苗を生産する者が原種等を適正かつ確実に生産できると認めるときは当該者を奨励品種の原種等を生産する者として指定することができ、この場合において、当該指定奨励品種の原種等については、県ではなく当該指定を受けた者が生産するとしている。原原種の生産について県の責務がない場合を規定するのは11道県の条例の中にはなく、原原種の生産まで民間に委ねようとする栃木県条例案の異質性は際立っている。
  D 種子生産ほ場の指定と審査について
    種子法の第1条は「この法律は、主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進するため、種子の生産についてほ場審査その他の措置を行うことを目的とする。」と定めていたので、種子法の枠組みの中で都道府県がほ場の審査を行うことは従来のシステムの根幹をなしていたといえる。
    11道県の条例では埼玉県を除き、知事や県による種子生産ほ場の指定や県に対する届出の規定及び道県によるほ場審査や生産物審査、さらに指導や監督に関する規定を置いている。埼玉県の場合には、条例には規定はないものの、条例施行と同時に埼玉県農林部による「埼玉県主要農産物種子生産基本要綱」が定められ、その中には、他の10道県の条例におけるのと同様なほ場の指定や審査の規定が置かれている。
    栃木県の条例案では、県による種子生産ほ場の指定や審査に関する規定はなく、種苗事業者の役割の規定の中で、種苗事業者は、種苗生産者が特定農作物の種苗の生産を行うほ場を選定し、当該選定に係るほ場において、特定農作物の種苗の生産が適切に行われているかどうか及び種苗生産者が生産した特定農作物の種苗が優良な種苗かどうかの確認を行うよう努めるものとするとの規定を置くに過ぎず、種子生産ほ場と生産された種子に関して県は何ら直接的な責任を負わないようにしており、11道県の条例とは全く異質である。
    ちなみに種苗事業者とは、特定農作物の種苗の生産に関し種苗生産等計画策定者と協議等を行い、譲渡の目的をもって、又は委託を受けて、種苗の生産を行う者と種苗生産等計画に即した特定農作物の種苗の生産に関する契約を締結する者と定義され、県と直接の関係はなく、種苗事業者が「種苗生産者が特定農作物の種苗の生産を行うほ場を選定し、当該選定に係るほ場において、特定農作物の種苗の生産が適切に行われているかどうか及び種苗生産者が生産した特定農作物の種苗が優良な種苗かどうかの確認を行うよう努めるものとする」という義務を守らなかったとしても、県が種苗事業者を指導する規定もなければ、県が種苗の生産を行う者を直接指導する規定もない。
 (3)栃木県条例案の修正の必要性
    以上種子条例の中の「目的、種子計画の策定、原種及び原原種の生産、種子生産ほ場の指定と審査」という主要な規定について、栃木県の条例案と11道県の条例を比較したが、栃木県の条例案の規定はあまりに11道県の条例の規定と異なるものであり、この条例案の内容で条例制定を行うことは、種子法によって構築・維持されてきた県が責任を持つ種子の生産・安定供給システムを種子法廃止後も維持するというよりは、県が責任を持たないシステムに変質させようとするものと言わざるを得ない。
    種子法廃止によって、農業者が都道府県から優良かつ安価な農産物種子の提供を受けられなくなって優良かつ安全安心な農産物が生産できなくなり、消費者も優良かつ安全安心な農作物を購入して消費する機会が奪われてしまうことを回避すべく、種子法によって構築・維持されてきた都道府県が責任をもって優良な種子を生産し安定的に供給するシステムを何とか維持するため種子法に代わる条例を制定しようという運動が栃木県においても当会を中心に展開され、条例制定を求める6895筆の署名が本年3月に栃木県議会議長と栃木県知事に提出された。
    この県民の強い要望を受けて、3月県議会において栃木県知事が条例制定の意向を表明し、当会は意を強くして11道県の条例と同様な内容を持つ条例試案を5月に公表したが、栃木県がパブリックコメントに先立って6月に公表した条例案は名称も種子条例ではなく種苗条例となり、内容は当会の試案とは全くかけ離れたものとなって、この9月の県議会において上程されるのである。
    栃木県が今回の条例案によって種子法の下で構築・維持されてきた県が責任を持つ主要農作物の優良な種子の生産・安定供給システムを維持するのではなく、県が責任を持たないものに変質させようとするのであれば、これは県民の要望を踏みにじるものと言わざるを得ない。
    前述したとおり、本陳情の陳情の趣旨(1)ないし(4)で条例案の修正を求めている事項は、11道県の条例の中ではわずかな例外を除いて種子法の趣旨に則って規定されている。何故先行して条例を制定した11道県でできたことを栃木県はやろうとしないのだろうか。
    栃木県議会がこのような条例案をそのまま採択して種子法廃止という国の暴挙に迎合してしまい、全国各地で展開されている種子条例制定の取組みに水を差すようなことがあれば、栃木県民だけでなく、全国で種子条例制定を求めている市民をも裏切ることになって、全国各地から栃木県の条例制定が失笑の対象にされることは避けられない。
    栃木県民の良識を示し、栃木県の名誉を守るためには、本条例案については、11道県の条例と同様に県が責任をもって優良な種子を生産し安定的に供給するシステムを維持できるように陳情の趣旨(1)ないし(4)記載の修正、さらに、栃木県の条例案上程までの経過からして今後の栃木県種子行政の適正・公平を担保する上で有識者や農業者、消費者等から構成される種子行政に関する審議会の設置が不可欠なため陳情の趣旨(5)記載の修正、そして条文調整のための陳情の趣旨(6)記載の修正が最低限必要とされている。
   私たち「種子の会 とちぎ」は、栃木県民を代表する栃木県議会の皆様のご英断によって、陳情の趣旨記載のとおりに今回の条例案が修正されて採決されることを確信し、ここに陳情するものである。

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