第40号 (平成30年) 東海第二原発の稼働延長を認めない意見書の提出を求める陳情
受理日:平成30年5月24日
付託委員会:生活保健福祉委員会
付託日:平成30年6月1日
議決日:平成30年6月13日
議決結果:不採択
要 旨
1 陳情の趣旨
東海第二原子力発電所(以下「東海第二原発」といいます。)において過酷事故が発生した場合、それによって放出される放射性物質により、栃木県内で大きな被害が発生する恐れがあります。
よって、栃木県議会におかれましては、東海第二原発の40年を超える運転を認めないことを要望する意見書を採択して、同意見書を、運転期間延長の許可権限あるいは許可に際して意見を述べる権限等を有する関係官庁に対して送付するよう陳情致します。
2 陳情の理由
(1) 過酷事故の虞れ
2017(平成29)年11月、日本原子力発電株式会社(以下「日本原電」といいます。)は東海第二原発の40年を超えての運転(以下「稼働延長」といいます。)をするための申請を行いました。
東海第二原発は、稼働後40年が経過しているため老朽化も激しい上、東京電力福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」といいます。)の事故原因が未だ明確になっていない中、的確な安全対策がなされるかは甚だ疑問です。
日本原電は1800億円をかけて安全対策を行うとしていますが、自己資金は少なく、資金調達が可能かどうか危ぶまれています。そのため、東京電力(株)が支援するという報道がなされたりしていますが、そもそも福島第一原発事故によって多額の賠償責任を負っている東京電力にそのような支援が可能なのか大いに疑問です。
加えて、仮に申請が認められ、申請通りの対策が行われたとしても、安全が保障されるわけではありません。
原子力規制委員会の田中前委員長が、「安全審査ではなくて、基準の適合性を審査したということです。基準の適合性は見ていますけれども、安全だということは私は申し上げません。」と述べたことは記憶に新しいことです。
また、東海第二原発は、水素爆発事故を起こした福島第一原発と同じく、国内では最も古い沸騰水型と呼ばれる原子炉で、東海第二原発以外の沸騰水型炉はすべて、廃炉になることが決定しています。
以上から、東海第二原発が稼働した場合、過酷事故を発生させるのではという不安を拭い去ることはできません。
(2) 避難の困難性
東海第二原発で過酷事故が発生した場合、茨城県の30q圏内の14市町村、約96万人が車で避難するとされています。本県のいくつかの市町が避難者受け入れの協定を結んでいます。しかし、避難が机上の計画通りに進まないことは、福島県民のみなさんの体験が示すとおりです。
浪江町津島地区に住んでいた避難者の皆様は、「他に避難するための唯一の道路である国道114号は渋滞して動きが取れず、ガソリンも食料も乏しく寒さに震えていた。そこに放射性物質が降り注いだ。避難計画など机上のものだ。」と、話してくださいました。現在でも、校庭や公共施設等に車が放置されている惨状があります。
茨城県から栃木県に避難するルートも限られていますので、同様に渋滞が発生することは確実です。
加えて、地震によって、道路が寸断され避難が困難になる虞れがあります。現に、避難ルートの一つである国道123号沿いの芳賀町と茂木町では、3.11の地震で1305gal、1291galの加速度が観測され(全国で7番8番の記録)、路面や擁壁に被害が出ました。
(3) 栃木県民も避難を余儀なくされる虞れがあること
別紙図のとおり、東海第二原発から本県の県境の茂木町まで約31q、宇都宮市中心部まで約65qです。栃木県は、避難を受け入れるのではなく、避難しなければならない場所なのです。
茂木町は、福島第一原発事故で大きな被害を受けた飯舘村と共通点が多くあります。40q未満の距離と方角、汚染物質が滞留しやすい豊かな森林などです。東海第二原発で過酷事故が起きた場合、那珂川沿いに汚染物質を乗せた風が遡り、飯舘村以上に過酷な被害をもたらされる虞れがあります。
福島第一原発事故では、原発が4基並んであったことも被害を大きくした要因です。東海第二は一基だけですが、立地する東海村には原発のみならず、使用済み燃料の再処理、核燃料製造など、多くの原子力関連施設があります。再処理施設には、この世で一番恐ろしい毒物だとも言われているプルトニウム溶液が約3.5?、人が浴びると数十秒で死に至るという高レベル放射性廃液が約430?保管されており、漏れ出すと関東一円に人が入れなくなると言われています。
放射性物質がまき散らされ人が近づけなくなると、これらの施設は−NoControl−となり首都圏どころか、日本の壊滅が待っています。
東海第二原発で過酷事故が発生したときには、このように他の原発にはない更に過酷な複合事故の懸念があります。
(4) まとめ
以上のように、東海第二原発の稼働延長が認められた場合、過酷事故の発生及びそれによって発生した放射性物質によって、栃木県にも甚大な被害が及ぶ虞れがあります。
このような被害を防止するためには、東海第二原発は、稼働延長を許さず、運転中止状態のまま廃炉にするしかありません。
東海第二原発の稼働延長については、立地自治体である東海村や茨城県だけでなく、東海村の隣接市にも意見を述べる機会が与えられていますが、隣接県である栃木県には全く意見を述べる機会は与えられません。
よって、貴議会に対し、東海第二原発の再稼働を認めない旨の意見書を採択した上で、同意見書を、東海第二原発の再稼働について許可権限あるいは許可に際して意見を述べる権能を有する官庁(経済産業省大臣、原子力規制委員会委員長、茨城県知事、東海村長、水戸市長、ひたちなか市長、那珂市長、日立市長、常陸太田市長)に送付するよう陳情致します。
以上