第12号 (平成11年) 「住民基本台帳法改正の撤回を求める意見書」の提出を求める陳情
受理日:平成11年8月23日
付託委員会:総務企画委員会
付託日:平成11年9月29日
議決日:平成11年10月7日
議決結果:不採択
(陳情の趣旨)
今年八月十三日に閉会した第一四五回通常国会で国民全員に十ケタのコード番号を与え、事実上「国民総背番号制」をもたらす住民基本台帳法改正が行われました。NHKによる世論調査でもプライバシーを侵されるとして過半数の国民が反対していたにもかかわらず、八月十二日、参議院での委員会採決を省略(国会法第五十六条三の発動)し、本会議で強行採決したのです。
すでに日本では「納税者番号」や「国民年金番号」など、多くの限定番号が活用され、国民生活を円滑に成り立たせています。なぜ今、個人情報を全国市町村から全国センターの指定情報処理機関を通じて十六省庁まで専用回路で結ぶ制度(コンピュータ・ネットワーク・システム)を必要としているのか合理的な理由が見当たりません。
懸念されていることは、こうしたコンピュータ管理による個人情報の一元的な集積が、国家の手によって行われてしまうことにより、プライバシー侵害が甚大なものになりはしないかということです。
また、民間への流用の危険についても、それを厳しく取り締まる個人情報保護を明確に法制化することが担保されなければ、安心できません。すでに、宇治市で二十二万人分の住民票データが漏れ、インターネットで情報が販売されるといった事件が起こっています。法律では「個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所用の措置を講ずる」と修正が加わりましたが、これを具体的に実効あるものにしていく姿勢が政府にどれほどあるのか疑問を持たざるを得ません。日本の法律にはよくこうした文言がつけられていますが、それが反故にされるケースが多いからです。
さて、諸外国でもこうした「国民総背番号制度」が導入されているのは十数ケ国に過ぎませんが、スウェーデンなどでは一応厳格な個人情報保護法が施行されています。しかも日本のように個人情報がコンピュータでデータベース化されようとしている国はどこにもありません。
とりわけ、個人情報に関して政府は最高八千文字(新聞一面分に相当)もの情報を集積できるIC(集積回路)の導入を想定しています。ここでは、救命や病歴管理、犯罪防止などを理由に本人や家族の健康状態、賞罰に始まり、職業や所得額、さらには思想信条にかかわる領域にまで情報が蓄積されていくのではないのかという批判の声があがっています。どの情報も採取し、書き込んでいくのは、十六省庁を束ねた行政側であり、国民の預かり知らないところで管理・監視が強まっていくことに戦慄を覚えます。
また、作成されるIDカードの利用の仕方は、自治体に委ねられています。
このIDカードは自治体にとって有用なものなのでしょうか。逆に煩雑な事務量が増えると同時に、地方分権に逆行した中央集権的な住民管理を意図していることは明白です。
つきましては、貴議会におきまして「住民基本台帳法改正の撤回を求める意見書」を採択していただき、内閣総理大臣及び自治大臣に提出してくださいますようお願い申し上げます。
(陳情事項)
「住民基本台帳法改正の撤回を求める意見書」を採択し、内閣総理大臣・自治大臣に送付すること。