第11号 (平成11年) 「国旗・国歌法の廃棄を求める意見書」の提出を求める陳情
受理日:平成11年8月23日
付託委員会:総務企画委員会
付託日:平成11年9月29日
議決日:平成11年10月7日
議決結果:不採択
(陳情の趣旨)
今国会において政府は、会期中途において突如「日の丸・君が代」を国旗・国歌とする法案を提出し、これに対する世論が大きく分かれる状況であるにも関わらず、十分な国会審議も尽くさず採択を強行し成立させた。このような立法の仕方は、国民の意志を無視するもの、国会の本来の使命に背くものである。
そればかりでなく、国旗・国歌を法制化すること自体が憲法の精神に反するものだとの指摘がある。日本国憲法を貫く原理は、人権尊重主義であり、一人ひとりの人間が主権者であることを認め、国家は個々の人間のために存在の意義を持つとの自覚に立っているのである。国旗・国歌法の制定は、特定の旗や歌をもって、国民を国家という全体集団に統合帰属させようとするものであって、憲法の民主主義に背反するというのである。
そもそも、政府が本法案を提出したきっかけは、広島県の高校校長の自殺という悲劇にあるとされている。「日の丸・君が代」を法制化することによって学校現場の混乱をなくすことが、提出の理由となっている。しかし、実態は違うのである。文部省は、法制化されていないにも関わらず「日の丸・君が代」の実施を、法的強制力を行使して学校現場に押しつけていた。この違法な行政権限の行使が悲劇の原因なのである。本法の立法化は、その違法行政の結果を逆手に取って、その責任を覆い隠そうとする意図があり、その発想は、多くの犠牲者を冒涜するものといわなければならない。
なお、「日の丸・君が代」の国旗・国歌化には正しい歴史認識の欠如が指摘されている。戦前の軍国主義・皇民化政策において、「日の丸・君が代」が教えられ、用いられてきた事実と、果たしてきた役割が省みられていない。「日の丸・君が代」は戦争国家日本のシンボルであった。この下に多くの日本人は戦場に送り込まれ、尊い生命を捨てさせられた。この下に始められた日本の侵略戦争によって、アジアの人々が苦難の歴史を経験、無数の人命が失われた。たとえ五十年余の年月を経過したとはいえ、日本国民として、また、国際社会においても、この犯した罪過は決して忘れられるものではないのである。これらの重い事実を想起するならば、今次の「国旗・国歌法」の成立は、私たちにとって肌の寒くなるような嫌悪感をもたらし、またアジアの人々に対して恥ずかしい思いに駆られるものである。
国会における法案審議の中で政府は、「国民の内心の自由に立ち入らない」、「強制することはない」と答弁した。しかし、法制化そのものが内心の自由の侵害であることは明らかである。政府が答弁したとおり「内心の自由」を守るとするならば、この法案の施行はできないのである。教育の現場で、行政の運用において「内心の自由」が何人にも保証されるように、チェックしていく必要も大きいのである。
(陳情する事項)
一、政府に対し、「国旗・国歌法」の廃止を求める意見書を、貴議会において議決し、意見書を提出されたい。
二、行政のあらゆる分野、中でも教育現場において、教師・児童・生徒に「内心の自由」の侵害がないように監視する取り組みを、具体的に立案し実施されたい。