第2号 (平成23年) 中学校社会科教科用図書[歴史的分野]の適正な採択に関する請願
受理日:平成23年6月7日
付託委員会:文教警察委員会
付託日:平成23年6月20日
梶 克之
議決日:平成23年10月14日
議決結果:取下承認
要旨
1 請願の趣旨
(1)採択に当たっては、教育基本法の示す教育の目的及び教育の目標に最も適合した教科用図書を選定していただきたい。
(2)教科用図書の調査研究に当たっては、学習指導要領に示す目標及び内容に最も合致した教科用図書を判別できるよう具体的な調査観点を設定していただきたい。
(3)採択に当たっては外部からの不当な介入を排し静謐な環境を確保するため、個別具体的に審議する会議等については非公開を原則とし、採択結果については採択理由を含め具体的に情報公開していただきたい。
2 請願の理由
(1) 平成20年12月25日、教科用図書検定調査審議会において「教科書の改善について(報告)」がとりまとめられ、教育基本法で示す目標等を踏まえた教科書改善など6項目の「教科書改善に当たっての基本的な方向性」が示されました。
文部科学省はこれを受けて平成21年3月30日、都道府県知事、同教育長等にあてて「教科書の改善について(通知)」を発出いたしました。この通知は、採択に当たっては教科書の装丁や見栄えを重視するのではなく、内容を考慮した十分な調査研究が必要であること、すなわち教育基本法等の改正や新しい学習指導要領の趣旨を踏まえた「教科書改善に当たっての基本的な方向性」を参考にし、各採択権者の権限と責任の下で十分な調査研究が行われ、適切な採択がなされることなどを示したものです。
教育基本法の主な改正点は、「豊かな情操と道徳心」、「公共の精神」、「自律の精神」、「生命や自然を尊重する態度」、「伝統や文化を尊重し、それを育んできたわが国と郷土を愛する態度」など旧教育基本法にはなかった現代国家の国民として当然備えるべき資質を明示したことです。
当然とはいえ現在わが県において使用されている教科用図書[歴史的分野]の多くは、そのままでは教育基本法の改正の趣旨に十分沿ったものとはいいがたいものです。したがいまして本年度に行われる採択においては、従来にもまして十分な調査研究を行い、最も教育基本法に沿った教科用図書を選定する必要があると思料いたします。
(2) 新しい学習指導要領の社会科[歴史的分野]の主な改正点は、歴史のとらえ方を重視するとともに、「かな文字の成立」、「幕藩体制下での教育の普及」など先人たちが積み重ねてきたわが国の誇るべき歴史事象を挙げ、教育内容をより具体的に示したことです。
現在わが県において使用されている教科用図書[歴史的分野]の多くが取り上げている歴史事象には、わが国の歴史における負の側面を強調するかのような記述が散見され、その表現方法においても必ずしも公正で均衡のとれたものとはなっていません。学習指導要領の改正によって教育内容がより具体化されたことを契機として、調査研究においてもその結果を一読すれば教育基本法及び学習指導要領に最も合致した教科用図書だと判別できるよう具体的な調査観点を設定する必要があると思料いたします。
(3) 教育基本法はその第16条において「教育は不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力のもと、公正かつ適正に行われなければならない」と定め、また、文部科学省の「教科書の改善について(通知)」においても「各採択権者の権限と責任のもと、十分な調査研究が行われ、適切な採択がなされることが必要」と述べられています。
いうまでもなく国内の教育行政におけるわが国の主権は他国の介入を許すものであってはならず、各採択区において使用する教科用図書の選定は国民の意思によって各地方自治体及び各教育委員会に委ねられた重要な事務です。過去わが県で起きたような採択事務に対する外部からの過剰な干渉を二度と許さないためにも、毅然とした態度をもって静謐な環境の確保に努めるなどの適切な対応がなされる必要があると思料いたします。