第77号 (平成18年) ヤミ金融地獄から市民を救済するための決議提言
受理日:平成18年5月31日
付託委員会:経済企業委員会
付託日:平成18年6月8日
議決日:平成18年10月10日
議決結果:採択
景気回復の数字マジックで浮かれる者がいる反面、追い詰められてヤミ金融に手を染め多重債務の重圧に耐え切れず、倒産、自殺するものが増加している実態がある。
その原因は例外的とはいえ、年50%を超す高金利と、暴力団まがいの執拗な取立てを関係当局が黙認していることにあるといわれている。各都県においても、実態調査の上、来年1月に予定されている「貸金業の高金利容認の法改正」に先立ち、国会、金融業界に対し、厳正・不動の弱者救済策として、早期に法改正の促進の決議を全会一致で決定され、同時に各都県版予防救済プランをご検討いただくよう下記のとおり提言する。
T 決議の内容
1 出資法第5条の上限金利を、現行利息制限法第1条の制限金利(金額により15〜20%)まで引き下げること
2 貸金業規制法43条のいわゆる「みなし弁済」規定を徹廃すること
3 出資法における、日賦貸金業者及び電話担保金融に対する特例金利(54.74%)を廃止すること
U 提言の理由
1 平成15年に24万件を突破したわが国の破産申立件数は、平成16年には僅かに減少したものの依然として高水準にある。また、法律により債務額を減額確定し返済する個人債務者再生手続は年々増加の傾向にあり、裁判外で債権者と交渉する任意整理事件は急増している。
こうした債務整理手続きを必要とする多重債務者は全国で200万人にも及ぶと推測され、経済苦による自殺は、平成15年度は8,897人(警察庁統計)にものぼり、さらにこの多重債務問題が、ホームレス、離婚、配偶者間暴力、児童虐待、凶悪犯罪等の被害を引き起こす要因になることが多々あり、依然として深刻な社会問題である。
2 多重債務問題の大きな原因はクレジット・サラ金・商工ローン業者等の高金利にある。
わが国の公定歩合が年O.10%、銀行の貸出平均金利は年2%以下という超低金利時代において、出資法の上限金利たる年29.2%は大変な高金利である。この高金利で借入をすれば、一般の消費者であれば誰でも家計を圧迫し、返済困難に陥ってしまうことは目に見えている。
金融広報中央委員会の世論調査によれば、2003年における貯蓄ゼロの世帯比率は全体の21.8%を占め、余裕資金のない世帯が突発的な資金需要に対応できずに出資法の上限に近い高金利に手を出せば、たちまち生活が立ち行かなくなるのが現実である。
3 ところが、貸金業者側は、出資法の上限金利を年40.0%から年29.2%に引き下げたことがヤミ金を跋扈させる原因になったと説き、出資法の上限金利の引き上げ、もしくは上限そのものの撤廃を目指して猛烈な議員要請等政治的攻略を繰り広げていると聞き及んでいる。
しかしながら、ヤミ金が跋扈したのは、卑劣な犯罪であるにも係らず捕まることがなく儲かったからである。出資法の上限金利の高低に関わらず、法を無視する者に対しては警察が総力をあげて取り締まるべきであり、「ヤミ金が増えると困るから金利規制を緩めよう」という主張は論理の擦り替えである。
4 勤務先の倒産、リストラ、営業不振による給料の減額等、厳しい経済情勢の中で喘ぐ県民・市民が安心して生活できる消費者信用市場の構築と、多重債務問題の抜本的解決のためには、少なくとも出資法の上限金利を利息制限法の制限金利まで早急に引き下げる必要がある。
5 一方、貸金業規制法43条は、債務者が利息制限法の制限を超える利息を「任意に」支払った場合に、貸金業者が法定の契約書面及び受取書面を適切に交付していた場合に限り、これを有効な利息の支払と「みなす」と規定している。いわゆる「みなし弁済」と呼ばれる規定である。しかし、厳格な条件を満たした場合に認められるとはいえ、この利息制限法の例外を認める「みなし弁済」規定の存在が貸金業者の利息制限法違反金利での貸付を助長し多くの多重債務者を生み出している。
すなわち、強行法規である利息制限法の制限金利が年15〜20%とされ、これを超えた利息は民事上無効であり、返済義務が無いとされているにもかかわらず、出資法の上限を超えない限り罰則の対象とならないことから、大手を始めとするほとんど全ての貸金業者は年25〜29%の約定金利で貸付を行っている。そもそも民事上無効であるはずの高金利による営業が許されていること自体が問題であり、このことが多重債務問題の最大の要因であるといっても過言でない。
現実には同条の「みなし弁済」を認める条件を満たした営業を行っている貸金業者は皆無に等しく、債務整理や訴訟においては利息制限法に基づいて債務額を確定し、過払金があれば債務者に返還することが実務の常識であるが行われていない。
最近の判例では、「みなし弁済」を認める要件を厳格に解釈し、利息制限法の上限を超える利息の支私いを無効とする判断が下されるようになってはきた。(最高裁平成18年1月13目判決)
利息制限法は債務者保護をその立法趣旨とする強行法規であり、その例外として暴利を認めるような貸金業規制法43条は、その立法趣旨に反し、また、「資金需要者の利益の保護を図る」という貸金業規制法自体の目的規定とも相容れないものである。
従って、貸金業規制法43条はもはやその存在意義を欠くものであり、出資法の上限金利の引き下げに伴い、撤廃すべきである。
6 同様に、出資法附則に定められている日賦貸金業者(日掛け金融)については、その返済手段が多様化している今日において、集金による毎日の返済という形態の必要性が失われていること、また、厳格に要件を守らず違反行為が横行し悪質な取立ての温床にもなっていること等から、その存在意義自体を認める必要性はなく、日賦貸金業者に認められている年54.75%という特例金利は直ちに廃止すべきである。
また、電話加入権が財産的価値を失くしつつある今日、電話担保金融の特例金利を認める社会的・経済的需要は極めて低く、この年54.75%という特例金利も直ちに廃止すべきである。
7 大手の都市銀行が貸金業者と資本提携、業務提携、或いは貸金業者に資金の貸付けをしているという実態が存在し、低金利時代にも、銀行は、今期空前の最高益続出の不思議である。従って、議員提案によるそれぞれの法案提出が噂されているが、すでに国会議員に相当な圧力がかけられており、金融業界の反対運動で、法案が骨抜きにされてしまうことが懸念される。
よって地域住民に直結した貴議会の力強い決議を切望するものである。以上