第112号 (平成11年) 米の関税化を撤回し、食料自給率を引き上げ、日本の食と農を守る陳情
受理日:平成11年3月1日
付託委員会:農林委員会
付託日:平成11年3月4日
議決日:平成11年3月12日
議決結果:不採択
陳情の趣旨
政府自民党は、昨年暮れ、今年四月からコメを関税化(自由化)することを、突如として決定しました。重大なのは、国民的議論も、国会での充分な審議も行わずに決定した暴挙であり、断じて容認することはできません。再交渉を目前にして関税化することは、事実上、交渉を放棄するものであり、直ちに撤回すべきです。
政府は、関税化の口実として「関税化した方が得だ」としていますが、関税化しても、義務輸入米は増え続けます。
また、「高関税にすれば大丈夫」といっていたはずなのに、アメリカが難色を示した途端に従量税(従価税では約四〇〇%強)に切り換えたように、関税を下げることを主目的とするWTO体制のもとで、高関税を維持し続けられる保証はまったくありません。
一九九四年にWTO協定によってミニマム・アクセス米の輸入を受け入れた結果、二二二万トンもの外米が輸入され、コメを輸入しながら農家に史上空前の減反が押しつけられることになりました。また、輸入急増によってあらゆる農畜産物価格が低下し、農家は極めて深刻な打撃を受けています。農民を苦しめ、日本農業を衰退させている最大の元凶がWTO農業協定であることは明らかです。
WTO協定の再交渉では、協定実施の影響や非貿易的関心事項(食糧安保、環境保全)などについても議論できるようになっています。食料主権を守る立場で、一律に農業生産を制限しているWTO協定を改定し、米を輸入自由化の対象から外し、義務輸入をやめるように堂々と主張することこそ日本政府のとるべき態度です。WTO協定の改定を求めることは、輸出国の利益に偏重した協定を公正な貿易ルールに改定することであり、世界の多くの国の賛同を得られるものです。
発展途上国からは「WTO協定で甘い汁を吸っているのはアメリカなど一部の輸出国だけ」などという批判が高まり、一九九六年の世界食糧サミットNGOフォーラムは「各国とも、自らが適切と考える食料自給と栄養水準を達成するための食料主権を持つ」と声明しています。
政府は、農業の再建と食料自給率の向上、世界的な食料問題の解決のためにもWTO農業協定の改定を求める国際世論の高揚にこそ努めるべきです。
農業基本法制定以来、農地面積は一〇〇万ヘクタール、農業就業人口は三分の一に減少しています。食料自給率(カロリー)は七九%から四一%に激減しました。
国民に安全な食料を安定的に供給するため、これまでの農政を転換し日本農業を立て直すことは急務です。
以上の趣旨から、貴議会が以下の施策の実現を求める意見書を採択され、関係機関に働きかけられますよう陳情します。
陳情事項
一、米の関税化をやめ、日本の食糧安全保障、環境保護の必要を考慮し、WTO農業協定を改定すること。国の食生活の基本となる米及び主な農産物を「例外なき自由化」から除外すること。WTO「セーフガード協定」を活用し、セーフガード(緊急輸入制限)を機敏に発動すること。
一、国民に安全な食料を安定的に供給するため、政府は食料自給率引き上げ目標を設定すること。
一、日本農業立て直しのため、@主な農産物の再生産を保障する価格保障を充実すること、A中山間地農業に環境国土保全を考慮した所得補償を行うこと、B農地を保全し、家族農業を発展させるためにも株式会社の農地保有を許さないこと。
一、国民の健康を守るため、WTO「衛生植物検疫協定」を改定すること。同協定によって緩められた食品安全基準を元に戻し、輸入食品の安全チェック体制を強化すること。