第69号 (平成18年) 栃木県立衛生福祉大学校保育学部存続の陳情
受理日:平成18年2月17日
付託委員会:厚生環境委員会
付託日:平成18年3月3日
議決日:平成19年3月9日
議決結果:不採択
栃木県は、平成17年11月21日に開催された県議会地方分権・行政改革特別委員会において、18年度から22年度までの5年間に取り組む「行政改革大綱(素案)」を発表しました。
素案には、行革推進の立場から、92項目115事業について廃止検討することが、実施スケジュールとともに明らかにされています。
その中には「県有施設の管理運営の見直し」の対象として栃木県立衛生福祉大学校保育学部も含まれ、平成18年から20年の3カ年で今後のあり方を検討・実施すると記されています。
「行政改革大綱(素案)」発表の翌日には、このことがマスコミで大きく取り上げられました。新聞各紙は、この「見直し」は「廃止」を視野に入れたものであると報じています(下野新聞・読売新聞11月22日)。
栃木県立衛生福祉大学校保育学部同窓会は、この事実を、重大な関心と大きな危機感をもって受け止めています。
栃木県立衛生福祉大学校保育学部は、戦後制定された児童憲章や児童福祉法の理念を実現するために質の高い保育士の養成を目的として、昭和38年に栃木県立保育専門学院として設立されました。
59年には栃木県立衛生福祉大学校保育学部となり、現在までに約2000人の卒業生を輩出しています。創立より40年の長い歴史の中で、卒業生は、戦後の児童福祉のパイオニアとして、また、担い手として児童福祉の第一線で活躍し、県内各地域において重要な役割を果たしています。
私たち同窓生は、衛生福祉大学校保育学部の見直し案が提出された背景には、栃木県内に民間の保育士養成校が増加したことにより、保育士養成に関する公的責任はすでに果たされたとの認識があるのではないかと推察しています。
しかし、保育士の資格取得者の量においてではなく、現在は質の面においてこそ、保育士養成を考えなければならない時代になっています。
子どもや子どもを取り巻く家庭や地域社会の状況は大きく変わり、病んでいる子どもや親が多くなってきているといっても過言ではありません。保育現場には、小児虐待をはじめとして、さまざまな特別支援を必要とする子どもの数は増加の一途を辿っています。そして、保育士はその対応に日々悩んでいるのです。保育の現場では、保育や福祉に関するより高度な理解と知識・技術を持った、質の高い保育士が希求されています。
このような現状を考えると、今後のあり方として検討すべきは、衛生福祉大学校保育学部の廃止という方向ではなく、現在の保育学部の上に専攻科を設置するなど、保育士養成の質的充実を建設的・発展的に見直していくことです。少子化が進行する中、国も県も子どもと子育てに関する多様な施策を推進していることを鑑みると、衛生福祉大学校保育学部の廃止は時代の要請に逆行するものであるといえましょう。
栃木県の児童福祉の原点である衛生福祉大学校保育学部の廃止は、栃木県の未来を拓くどころか、むしろ閉じてしまうことになりかねません。児童福祉の灯を消すことなく、その灯がさらに明々と大きく燃え児童福祉を確実なものとするために、衛生福祉大学校保育学部の存続並びに発展的な見直しを関係者の署名を添えて強く陳情します。