第51号 (平成17年) 「市場化テスト」や「給与構造見直し」に反対する意見書の採択を求める陳情
受理日:平成17年1月24日
付託委員会:総務企画委員会
付託日:平成17年2月23日
議決日:平成17年3月23日
議決結果:不採択
地方自治の確立・拡充、住民の生活と福祉の向上のためのご努力に敬意を表します。
私どもは、国と地方の公務・公共サービスのもっとも大きな役割は、憲法が保障する基本的人権を具体化していくことにあると考えます。そのために必要なことは、第一に、地域による格差、所得による格差を縮小し、公正な社会をめざす理念を明確にすることであり、第二に、その役割にふさわしい水準のサービスを提供する制度を維持することであり、第三に、サービス提供を支える人材を確保することであると考えます。しかし、昨年12月24日に閣議決定された「今後の行政改革の方針(新行革大綱)」は、国と地方の財政悪化の下で、国の公務・公共サービス減量化、地方自治体への公務・公共サービス減量化押し付けを行おうという政府の方針を示しています。小泉改革の「本丸」とされる郵政民営化が、ユニバーサルサービスを骨抜きにし、地域間格差を拡大することが指摘されているように、公共サービスの民間開放では国民の利益と権利が損なわれることが懸念されます。
三位一体改革も、税・財源委譲や国による財政調整が不十分なままでは、教育や福祉の水準維持が困難になり、国と地方が協力し、一定水準の公務・公共サービスを提供して格差を縮小するという、これまで広く共有されてきた理念に逆行することとなります。
また、制度の面では、「市場化テスト(官民競争入札)」がすべての国・地方自治体のサービスを営利企業にゆだねる手段として導入されようとしています。「市場化テスト」では、委託企業が契約のたびに変わることも想定しており、安定的、継続的に、求められる水準のサービスを提供することが困難であるといわなければなりません。公正な社会のための公務・公共サービスを提供することよりも、営利企業による効率的な経営の方を善とする立場から導入される制度には、大きな疑問を抱かざるをえません。
さらに、政府・人事院は、地方勤務の公務員賃金が民間賃金より高いとして、同一の職務には同一の給与を支払うという職務給原則を事実上踏みにじり、大幅な地域間格差導入を狙っています。これは、職員の士気を低下させ、人材確保を困難にするだけでなく、国から地方へ、地方から民間へと賃下げの悪循環をもたらし、地域経済をいっそう深刻な状況にするものです。
以上の点から、(1)住民に対する行政サービスの確保に必要な権限と財源を確保すること、(2)国民の権利保障を後退させる公務・公共サービスの民営化や「市場化テスト」は行わないこと、(3)人材確保を困難にし、地域経済を疲弊させる公務員賃金への地域間格差の導入は行わないこと、を趣旨とする意見書を採択いただき、関係機関に送付いただきたく陳情します。
【「市場化テスト」や「給与構造見直し」に反対する意見書案】
景気回復がいわれる一方、地域間格差、所得階層間格差が拡大しており、憲法が保障する基本的人権を具体化し、社会的不平等を是正するとともに、公正な社会づくりを進める国と地方の公務・公共サービスの役割発揮が求められている。そのために必要なことは、第一に、地域による格差、所得による格差を縮小し、公正な社会をめざす理念を明確にすることであり、第二に、その役割にふさわしい水準のサービスを提供する制度を維持することであり、第三に、サービス提供を支える人材を確保することである。しかし、昨年12月24日に閣議決定された「今後の行政改革の方針(新行革大網)」は、国と地方の財政悪化の下で、国の公務・公共サービス減量化、地方自治体への公務・公共サービス減量化押し付けを行おうという政府の方針を示している。小泉改革の「本丸」とされる郵政民営化が、ユニバーサルサービスを骨抜きにし、地域間格差を拡大することが指摘されているように、公共サービスの民間開放では国民の利益と権利を損なうことが懸念される。
三位一体改革も、税・財源委譲や国による財政調整が不十分なままでは、教育や福祉の水準維持が困難になる。国と地方が協力し、一定水準の公務・公共サービスを提供して格差を縮小するという理念に基づく財政制度を確立することが必要である。
また、「市場化テスト(官民競争入札)」がすべての国・地方自治体のサービスを営利企業にゆだねる手段として導入されようとしている。「市場化テスト」では、委託企業が契約のたびに変わることも想定しており、安定的、継続的に、求められる水準のサービスを提供することが困難である。営利企業による効率的な経営の方を善とする立場でなく、公正な社会のための公務・公共サービスを提供することが必要である。
さらに、政府・人事院は、地方勤務の公務員賃金が民間賃金より高いとして、同一の職務には同一の給与を支払うという職務給原則を事実上踏みにじり、大幅な地域間格差導入を狙っている。これは職員の士気を低下させ、人材確保を困難にするだけでなく、国から地方へ、地方から民間へと賃下げの悪循環をもたらし、地域経済をいっそう深刻な状況にすることが明白である。
したがって、関係各方面に以下の諸点の実施を強く求める。
1.住民に対する行政サービスの確保に必要な権限と財源を確保すること
2.国民の権利保障を後退させる公務・公共サービスの民営化や「市場化テスト」は行わないこと
3.人材確保を困難にし、地域経済を疲弊させる公務員賃金への地域間格差の導入は行わないこと。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
内閣総理大臣 小泉 純一郎 殿
人事院総裁 佐藤 壮郎 殿
財務大臣 谷垣 禎一 殿
総務大臣 麻生 太郎 殿