第32号 (平成15年) 備中沢産業廃棄物最終処分場の建設反対についての陳情
受理日:平成15年12月15日
付託委員会:厚生環境委員会
付託日:平成16年3月15日
議決日:平成16年6月14日
議決結果:不採択
陳情の要旨
平成15年10月、栃木県環境整備課は「適地性判断のための環境影響評価書(案)」(適地性アセスメント)を公表しました。そして、「備中沢に産廃処分場を設置することを回避すべき重要な要素は存在しない」と結論づけています。しかし、この環境影響評価は、「最終処分場は安全である」という誤った前提に立って、建設を推進する立場でまとめられたもので、とうてい地域住民の納得を得られるものではありませんでした。
産廃処分場の建設予定地は、町営水道の上流に位置し、貯蔵される有害物質が僅かでも流失すれば、町民の生命の安全を脅かすことになります。そして、その危険性は十分にあります。今回の環境影響評価では、町営水道の水源に対する調査がずさんで、住民側の指摘によって県も追加調査を行わざるを得ない事態となりました。
また、建設予定地から500メートル以内に人家が存在し、ダイオキシンなどを高濃度に含んだ煤塵による汚染が心配されます。しかも、周辺地域には小学校も存在し、新しく幼稚園も作られます。大人よりも人体に影響を受けやすい子供たちを危険にさらすことになるのです。有害物質を含んだ煤塵は、スギ花粉より軽く、数10キロに及んで拡散すると言われています。その被害は馬頭町全体に及ぶものとみられます。
県の試算でさえ、産業廃棄物を積んだ10トンダンプが1日に80回も行き来することを予想しています。さらに、覆土のためのダンプも来ます。こうした環境悪化は、交通事故増大の不安を招くことでしょう。
周辺には「馬頭温泉」、「小砂焼」という馬頭町にとっては最大の観光資源が存在しています。産廃処分場が建設されることによって、これらの観光資源は大きなイメージダウンを強いられます。また、処理水が放流される下流域には馬頭町の農業地帯が広がっています。ダイオキシン汚染などによる風評被害が発生した場合、その損失は計り知れません。
備中沢は数多くの貴重な生物が生息する素晴らしい自然環境を保っています。そこに産廃処分場が作られてしまえば、Aの不法投棄によって受けた何十倍もの環境破壊を重ねて受けることになります。貴重な環境を保護するという観点からも、産廃処分場の建設は認められないものです。
今回の環境影響評価では、前記のような視点があまりにもおざなりにされており、地域住民は懸念を強めています。
そこで、BとCは、備中沢の産廃処分場の周辺地域となる、D、E、Fの3大字地区で、有権者を対象として産廃処分場建設に対する反対署名を集めました。その結果、D地区では258名、E地区では463名、F地区では568名、合計で1,289名の反対署名が集まりました。
これは、有権者の割合でみると、D地区の51%、E地区の76%、F地区の78%に当り、合計で70%にのぼります。実に、周辺3大字の有権者の7割が、産廃処分場建設に反対を表明しているのです。県の適地性アセスメントの概要が明らかとなった後でも、周辺住民の7割もの人たちが産廃処分場に対して大きな不安を抱き、建設に反対しているわけです。
知事も産廃処分場の建設については「住民の合意が必要」としてきました。また、県の指導要綱でも、地元住民、地元自治会との合意が必要と定められています。反対署名の結果からも、地元住民が産廃処分場建設に合意していないことは明らかです。産廃処分場の建設は中止されるべきものと考えます。
よって、栃木県議会におかれましては、馬頭町の周辺住民の意思を尊重し、備中沢における産廃処分場の建設計画を中止するための決議を採択されますよう、ここに陳情いたします。