第30号 (平成15年) 栃木県立鹿沼商工高等学校定時制(夜間部)の存続を求める陳情
受理日:平成15年11月21日
付託委員会:教育環境対策特別委員会
付託日:平成15年12月5日
議決日:平成16年3月24日
議決結果:取下承認
一 陳情の趣旨
(一)栃木県立鹿沼商工高等学校定時制(夜間部)を、県南地域の栃木市に設立を予定している定時制・通信制単位制高校に統合しないこと。
(二)栃木県立鹿沼商工高等学校定時制(夜間部)を、今後も存続させること。
二 陳情の理由
昨年八月七日、栃木県教育委員会が鹿沼商工高校定時制(夜間部)を統合すると発表して以来、上都賀地区においては地区内三市三町の首長等が連名で「存続を求める要望書」を県知事、県議会議長、教育長に提出し、また同校同窓会、自治会を中心に設立された本会「栃木県立鹿沼商工高等学校定時制(夜間部)を存続させる会」(通称「存続させる会」)が、同年九月十九日と十一月十九日に合せて十一万人を超える署名を添え、県知事、県議会議長、教育長に要望書を提出したところであります。
わずか二ヶ月余でこのように多数の署名が集まったことは、上都賀地区唯一の定時制(夜間部)を廃止することが、教育の機会均等を損なうのみでなく、「地域の将来の人づくりを妨げる」大問題と県民が判断したからにほかなりません。
「存続させる会」の要望に対し県知事は「教育委員会の判断」として回答を避け、また教育委員会は「発表した計画は変えない」と答えるのみで、要望はなんら受け入れられませんでした。
県は今年七月に「県立高等学校再編基本計画」を発表し、既存の定時制(夜間部)を「規模と配置の適正化」という名目で廃止し、県内二箇所に設置する「フレックス・ハイスクール」に統合するとしました。
これは「存続させる会」が問題点として訴えてきた『通学時間』に対する配慮を全く欠くものであります。云うまでもなく勤労学生は一日二十四時間という限られた時間の中で「勤労者と学生」としての二重生活をします。現在本校では六十二名の在校生のうち二十五名が藤原・今市・日光地区から通学しており、栃木市に統廃合されるなら、現在の通学時間にさらに四十分以上の余計な時間がかかります。鹿沼在住の生徒も同様で、勤労をやめるか、学生をやめるかというぎりぎりの選択をしなければなりません。
一方「再編計画」は、「従来の勤労学生に加え、多様な生徒及び社会人に高校教育の場を提供する」としています。確かに幅広いビジョンを持った「フレックス・ハイスクール」は魅力的に見え、新たな入学希望者層を取り込めるかもしれません。少子化による生徒数減少の対策としては、時代に即していると思えます。
しかしそれは「従来の勤労学生」が安心して教育を受け続けられる環境を、残すことが前提です。通学距離・時間が大幅に増加しては、勤労学生の生活が成り立たず、どんな素晴らしい学校でも通うことができません。定時制(夜間部)の廃止を強行すれば勤労学生の多くは進路を失う事態となり、勤労学生を切り捨てることになるのです。
なぜ、今ある教育の場を県は急いで廃止するのでしょうか。財政負担の軽減を言うなら六十数億円の学校を二箇所新設するより、既存設備に手を加え、きめ細かな教育環境を形成して再利用したほうが得策です。また財政負担を惜しまず教育の成果を求めるなら、勤労学生切り捨てをせず、既存の定時制(夜間部)を存続させ、「フレックス・ハイスクール」と両立して教育機会を厚くするのが妥当ではないでしょうか。新しいものをつくったから古いものを壊すとの論理を定時制(夜間部)という制度に当てはめるには、多くの無理があります。
県知事は「存続させる会」との会談の席で「今の時代は昔のような勤労学生はいない」と発言しました。昔と今、働きながら学ぶ人々に何の違いがあるのでしょうか。また「今年の入学生の中で正社員は二人しかいない」とも発言しました。大学卒業生すら就職に難儀する時代、中学を卒業して正杜員になれた、優れた生徒になぜ拍手を贈れないのでしょうか。こうした県知事の理不尽な発言は、何が何でも定時制(夜間部)を切り捨てるとの頑なな姿勢の表れであり、絶望感を禁じ得ません。
改めて県議会にお願い致します。私たちは「フレックス・ハイスクール」の設置は認めます。しかし鹿沼商工高校定時制(夜間部)を現在のまま存続させ、上都賀地区生徒の働きながら学ぶという選択肢を残してください。
合計十一万人を超える「存続を求める」署名は、上都賀地区に居住する県民の総意であります。県議会議長 梶 克之様におかれましては、こうした民意をご斟酌下さり、将来に禍根を残す「廃止」計画を是正させ、上都賀地区唯一の定時制(夜間部)を存続させるため、力強いリーダーシップを発揮して下さい。
県議会議長 梶 克之様ならびに県議会議員各位のご決断により、本陳情書が速やかに採択され、問題解決に至りますことを深く期待し、重ねてお願い申し上げるものであります。