第1224号 「2024年問題」に関する対策を求める意見書
議決年月日:令和5年12月21日
議決結果:可決
議第12号
「2024年問題」に関する対策を求める意見書
働き方改革関連法は、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保等を目的として2019年4月から施行され、多くの産業において労働環境に重要な変革をもたらし、社会全体の労働環境を質的に向上させている。
一方、建設、自動車運転(物流)、医療などの事業・業務については、それらの業務の特性や取引慣行等の課題があるとされ、時間外労働の上限については5年間猶予期間が設けられ、この一部特例付きの適用は、様々な独自の問題や課題に対応するための暫定的な措置とされている。
この5年間の猶予が終了する2024年4月1日以降は、適用が猶予されたこれらの事業・業務について、担い手不足や倒産リスクの増大等、様々な問題が懸念されている。
そうした状況に配慮し、関係団体・企業等からの意見等も十分に踏まえ、適用猶予事業・業務における長時間労働の是正と、多様な働き方の実現に向け、国として具体的かつ計画的に取組を実施し、それぞれの事業や業務が持続可能なものとなるよう、実効性のある対策を積極的に進めることが必要である。
よって、国においては、次の事項について、財政的な措置を含め、早急に取り組むよう強く要望する。
記
1 物流業界は既に担い手不足の深刻化やカーボンニュートラルへの対応を求められており、2024年問題への対応により更なるドライバー、輸送能力不足が懸念されている。それらにより急激な売上げ減少、さらには倒産等を招き、負の連鎖につながらないよう、国から告示されている原価計算に基づく「標準的な運賃」の確実な収受等に向けて、各種取組を強化すること。
2 建設業においては、今後週休2日制工事に伴う適正な工期設定や現行経費の新たな補正措置等の支援を通し、担い手の確保・育成への取組を強化すること。
3 物流や建設分野の働き方改革に関しては、産業や労働者の実状を十分把握し、荷主・物流事業者及び消費者、建設業者・施工者及び施主等の全ての関係者が課題解決のための取組の重要性を認識し、連携・協力して、商慣行の見直し等を促進するなど、対策を強化すること。また、物流事業者の経営安定やドライバーの賃金向上等に向けた適正運賃収受・価格転嫁は、運賃の値上げにつながり、荷主である生産者・製造業者等の費用負担が増加し、地域経済が打撃を受けることが懸念されるため、影響の軽減に向けた取組への支援を強化すること。
4 医師の働き方改革や、地域医療支援を担う大学病院等の働き方改革の取組に対する支援を通し、医療における地域間格差が生じないよう、時間外労働の上限規制適用後の安全・安心な医療提供体制構築に向けた各種取組を強化・支援すること。
5 医師の働き方改革を進めるため、長らく課題となっている地域間・診療科間の医師の偏在など、地域の様々な問題の早急な是正に向け、より効果的な医師確保対策を進めること。
6 業務の効率化や生産性の向上とともに、労働環境の改善を図るため、地方の中小企業、小規模事業者等に対するDXやGXの推進、AI等の新技術の活用・普及に向け、財政的・人的支援を行うこと。
7 2024年4月からの時間外・休日労働時間はあくまで上限を示すものであって、今後の状況を見極め、更なる見直しを行い、社会に求められるエッセンシャルワーカーが持続可能な働き方ができるよう、より積極的な取組を進めること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和5年12月21日
栃木県議会議長 佐 藤 良
内 閣 総 理 大 臣
総 務 大 臣
財 務 大 臣
厚 生 労 働 大 臣
農 林 水 産 大 臣 宛て
経 済 産 業 大 臣
国 土 交 通 大 臣
デ ジ タ ル 大 臣
衆 参 両 院 議 長