第1195号 地方財政の充実・強化を求める意見書
議決年月日:令和3年10月15日
議決結果:可決
地方財政の充実・強化を求める意見書
地方自治体では加速する高齢化に伴う医療・介護等社会保障への対応のほか、昨年の出生数が八十五万人を下回るなど、急激に人口減少が進行する中、更なる子育て支援策の充実、地域公共交通の維持・確保など、広範かつ複雑化した行政需要への対応が求められている。
さらに、公的サービスの提供を支える人材が限られ、また、業務が増大する中、依然として猛威を振るう新型コロナウイルス感染症への対策並びに近年頻発・激甚化する自然災害からの復旧・復興、防災・減災事業の取組など、早急な対応を要する課題にも直面しており、今後の地方財政への影響が大いに懸念される。
政府は、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二一」において、二〇二二年度から二〇二四年度までの三年間、地方の一般財源総額を二〇二一年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保するとしている。しかし、地方自治体においては、直面する課題等への対応に十分な財源が必要であるほか、新型コロナウイルス感染症の感染状況等によっては、今後、巨額の財政出動が必要となるおそれもあることから、二〇二二年度以降の地方財源が十分に確保できるのか、不透明な状況にある。
このため、二〇二二年度の政府予算と地方財政の検討に当たっては、コロナ禍による新たな行政需要なども把握しながら、歳入・歳出を的確に見積もり、地方財政の確立を目指すことが必要である。
よって、国においては、次の事項に取り組むよう強く要望する。
記
一 頻発・激甚化する自然災害に備えた防災・減災対策、デジタル化、地域交通対策や脱炭素社会を見据えた環境整備など、持続可能な地域社会づくりに必要な財源について、地方自治体が地域の実情に沿ったきめ細かな行政サービスを十分担っていくための地方単独事業分も含め、地方財政計画に的確に反映し、地方一般財源総額の確保・充実を図ること。
二 子育て支援や地域医療の確保、地域包括ケアシステム構築の促進、生活困窮者への自立支援、児童虐待防止など、多様化する社会保障ニーズに対応するため、地方財政措置を的確に行うとともに、それらに必要な人材確保のための予算を拡充すること。
三 今年度の感染拡大への対応等のため、大幅な不足が見込まれる新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金について、補正予算等において増額を図るとともに、新年度予算でも十分な財源を措置すること。併せて、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金についても、今後の感染症対策に支障が出ないよう確保・充実を図ること。
四 地方自治体が、中長期の人口推移等を踏まえながら、地方創生の取組を地域の実情に応じて継続的かつ主体的に進めていくことができるよう、まち・ひと・しごと創生事業費を継続・拡充するとともに、地方創生推進交付金についても、地方の意見を十分踏まえ、予算枠の拡充や柔軟な運用を図ること。
五 自治体間における財源の格差是正に向け、偏在性の小さい地方消費税等について、国から地方への税源移譲を行うとともに、各種税制の廃止・減税を検討する際は、自治体財政への影響を十分検証し、代替財源の確保等により地方財政運営に支障が生じないよう対応を図ること。
以上、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
令和三年十月十五日
栃木県議会議長 阿 部 寿 一
内閣総理大臣
財務大臣
総務大臣 宛て
厚生労働大臣
衆参両院議長