第1175号 中高年の引きこもりに対する実効性のある支援と対策を求める意見書
議決年月日:令和2年6月12日
議決結果:可決
中高年の引きこもりに対する実効性のある支援と対策を
求める意見書
昨年三月に、内閣府が公表した調査結果では、四十歳から六十四歳の引きこもり状態の人は全国で約六十一万人にのぼると推計され、同じく内閣府が二〇一六年に公表した、四十歳未満の引きこもり状態の人の約五十四万人を超えており、中高年の引きこもりの問題が浮き彫りとなった。
また、中高年の引きこもりは、引きこもりの子を養う親の高齢化により介護や生活困窮を同時に抱える「八〇五〇問題」も深刻である。
さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による経済状況の悪化により、失業者が増えており、就職氷河期世代を含めた中高年の引きこもりの増加が懸念されている。
こうした中、本県では、今年の五月から、県子ども若者・ひきこもり総合相談センターにおいて、中高年の引きこもりに関する電話相談の専用窓口を開設し、就労やコミュニケーションなど家族や本人が抱える悩みの相談に応じているところである。
しかし、全国ひきこもり家族会連合会の調査によれば、相談等の行政支援の利用に当たっては、相談窓口のたらい回しや、事務的な対応で不安や苦しみへの理解がないと感じる等の理由から、相談者の約四割が途中で支援を受けることを中断してしまうとのことであり、更なる相談体制の強化や、支援者のスキル向上が不可欠である。
よって、国においては、中高年の引きこもりに対して実効性のある支援を行うため、次の事項に取り組むよう強く要望する。
記
一 より身近な場所で相談支援を行うため、自立相談支援機関の窓口にアウトリーチ支援員を配置するとともに、支援員全体の相談スキル向上のための研修等の実施など、相談体制強化に向けた対策への財政支援を行うこと。
二 行政支援を必要としている引きこもりの本人や家族に対して、相談窓口をたらい回しにすることがないよう、ワンストップで相談を受けられる相談体制の整備をより一層促進すること。
三 介護や生活困窮を同時に抱えて行き詰まる「八〇五〇問題」への対応を強化するため、相談事業を行う市町村が、介護財源を活用できるようにする制度を早期に実現すること。併せて、医療や介護、生活困窮や障害、子育て等、複合的なニーズやライフステージの変化に柔軟に対応できるよう、これまでの制度の枠を越えて包括的に支援することができる新たな仕組みを早急に構築すること。
以上、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
令和二年六月十二日
栃木県議会議長 相 馬 憲 一
内閣総理大臣
財務大臣
総務大臣 あて
厚生労働大臣
衆参両院議長