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請願・陳情 議決結果一覧

詳細情報

請願・陳情名

第37号 (平成26年) 「最低賃金の改善と中小企業支援の拡充を求める意見書」の採択を求める陳情

受理年月日

受理日:平成26年5月23日

付託委員会

付託委員会:経済企業委員会
付託日:平成26年6月4日

紹介議員

議決結果

議決日:平成27年4月29日
議決結果:審査未了

内容

要旨
1 陳情の趣旨
  最低賃金の改善と中小企業支援の拡充を図るよう、国への意見書の提出を求める。

2 陳情の理由
 金融緩和や大型公共投資、円安・株高の後押しもあり、輸出関連企業や大企業の業績が好調です。安倍首相は、中小企業の業況改善や有効求人倍率の回復に言及し、景気見通しの明るさを強調しつつ、賃上げによって経済の好循環を実現するとの方針を掲げています。ところが、実態としては、労働者の雇用と賃金は改善されていません。栃木県が発表した「平成25年栃木の労働環境事情」によると非正規雇用は前年の37.2%から38.7%へと増加するなど雇用の不安定化は全国的な傾向と同様に拡大しています。これでは、ワーキング・プアと言われる状態の改善や脱出は困難です。物価上昇のもと、まともな賃金を得られる雇用機会が少なくては、消費の活性化も望めません。さらに現在の最低賃金は、最も高い東京でも時給869円、栃木県では718円、最も低い地方は664円です。健康で文化的な生活には足らない上、地域格差の拡大により、本県から首都圏への就職など低賃金の地方からの労働力の流出を促す要因となっています。中小企業への助成や融資、仕事起こしや単価改善につながる施策を拡充すると同時に、最低賃金を改善することは、景気刺激策として有効です。低所得層ほど消費性向は高く、身の回りの衣食関連財・サービスなど中小企業の得意とする商品を地域で購入する傾向が強いからです。
 経済グローバル化を理由に、最低賃金を抑制する意見もありますが、同じグローバル下の他の先進国は、多くが最低賃金を1,000円以上とし、平均賃金も引き上げて内需を確保しています。ドイツでも時給8.5ユーロ(約1180円)の全国一律最低賃金制導入の流れや、アジア諸国でも最低賃金の大幅引き上げや新設が盛んです。低賃金を蔓延させて競争力をつけるという発想は少なくとも主流ではありません。低賃金労働に頼る経営と労働市場は、企業の成長力と地域経済の消費購買力をともに失わせ、社会を不安定にするとみなされているからです。公正取引の確立の面からみても、最低賃金を生活保障水準に引き上げ、企業間取引の力関係の中で単価削減・賃下げが押しつけられないようにし、適正利潤を含んだ単価を実現させることが大切です。
 憲法25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定められ、労働基準法は第1条で「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」とし、最低賃金法は、最低賃金は生活保護を下回ってはならないとしています。最低賃金の地域格差をなくして大幅に引き上げ、中小企業支援策の拡充を実現するため、貴議会におかれましては、国に対して別紙の意見書を提出するよう陳情します。


(別紙 案)
 地域からの経済好循環の実現に向け最低賃金の改善と中小企業支援策の拡充を求める意見書

 今や雇用労働者の3人に1人は非正規雇用、年収200万円以下のワーキング・プアであり、平均賃金は、2000年に比べて10%も減っている。世界に例を見ない賃金の下落が、消費の低迷、生産の縮小、雇用破壊と企業の経営危機を招く悪循環を形成してきたのであり、政府が「賃上げによる経済好循環」を目指すのは正しい。
 東日本大震災からの復興も遅れている。過去最大の大規模予算をもとにした多額公共事業や自治体の各種施策、民間の投資も、まともに暮らせる賃金、専門性に見合った賃金を伴う雇用の創出につながらなければ、人々の生活再建も地域の復興も進まない。
 今の地域別最低賃金は、東京で869円、栃木県では718円、最も低い地方では664円にすぎない。フルタイムで働いても税込で120〜160万円では、まともな暮しはできない。また、地域間格差も大きく、栃木県と東京では時間額で151円も格差があるため、青年の県外流出を促している。また、世界各国の制度と比較すると、日本の最低賃金は低水準と地域格差がある点で特異である。先進諸国のグローバル・スタンダードに近づけるため、最低賃金の地域間格差の是正・全国一律への改正と金額の大幅な引き上げが必要である。
 2010年には「できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、2020年までに全国平均1000円を目指す」という政労使の「雇用戦略対話合意」が成立している。最低賃金1000円は、中小企業には支払いが困難との意見もあるが、欧州の先進諸国の最低賃金は、購買力平価換算で時間額1000円以上、月額約20万円が普通である。高い水準の最低賃金で労働者の生活と労働力の質、消費購買力を確保しつつ、地域経済と中小企業を支える経済を成り立たせている。日本でも、中小企業への支援策を拡充しながら、最低賃金を引き上げる必要がある。生活できる水準の最低賃金を確立し、それを基軸として生活保護基準、年金、農民の自家労賃、下請け単価、家内工賃、税金の課税最低限度等を整備すれば、誰もが安心して暮らせ、不況に強い社会をつくることができる。
 以上の趣旨より、下記の項目の早期実現を求め、意見書を提出する。
                  記
1.政府は、ワーキング・プアをなくすため、最低賃金の大幅引上げを行なうこと。
2.政府は、全国一律最低賃金制度の確立等、地域間格差縮小のための施策を進めること。
3.政府は、中小企業への支援策を拡充すること。中小企業負担を軽減するための直接支援として、中小企業とそこで働く労働者の社会保険料負担の引き下げを実現すること。
4.政府は、中小企業に対する代金の買い叩きや支払い遅延等をなくすため、中小企業憲章をふまえて、中小企業基本法、下請二法、独占禁止法を改正すること。
5.公共事業の下請単価と現場労働者の報酬の適正化に向け、公契約法の制定を行うこと。
6.政府は、雇用の創出と安定に資する政策を実施すること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

  内閣総理大臣 宛て
  厚生労働大臣 宛て

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