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請願・陳情 議決結果一覧

詳細情報

請願・陳情名

第85号 (平成18年) 宇都宮馬場通り西地区再開発事業に関する陳情

受理年月日

受理日:平成18年9月21日

付託委員会

付託委員会:土木委員会
付託日:平成18年9月29日

紹介議員

議決結果

議決日:平成18年10月10日
議決結果:不採択

内容

第1 陳情の趣旨
 栃木県は、宇都宮市馬場通り西地区再開発事業準備組合が提出する同地区の事業計画につき、形式的に都市再開発法に定める手続を履践したかどうかだけでなく、景観問題を中心とする法令違反がないかどうかを、実質的に審議すること。

第2 陳情の理由

1 これまでの経緯と今後の予定
 二荒山神社前の再開発事業は、平成12年12月に上野百貨店が倒産した影響等で停滞していたが、Aが、平成15年3月に旧上野百貨店本館及びその敷地を、平成17年3月に新館及びその敷地を取得したことから進展に向い、次のとおり、馬場通り西地区(宇都宮市馬場通り1丁目二荒山神社参道西側)には、24階建超高層マンションの建設計画が進んでいる(資料1)

 (これまでの経緯)
 平成17年7月  宇都宮市馬場通り西地区再開発準備組合(再開発準備組合)設立
 平成17年12月  再開発準備組合が同地区の再開発事業の構想
            (24階建超高層マンション建設構想)を発表
 平成18年3月  宇都宮市が同地区の都市計画決定
            (同地区の建築物高さ制限が緩和される)

 (今後の進行予定)
 平成18年9月  宇都宮市馬場通り西地区再開発事業組合(再開発事業組合)設立
         栃木県が事業計画を認可
 平成19年3月  栃木県が権利変換計画を認可
 平成19年5月  既存建物除去工事
 平成19年11月  本体工事着工
 平成21年10月  竣工

2 事業計画(24階建超高層マンション建設)の概要
  馬場通り西地区に建築予定の24階建高層マンションの概要は次のとおりである。
    高さ  約82.5メートル(以下省略)

3 陳情者らが24階建超高層マンション建設に反対する理由
(1) 景観破壊
 馬場通り西地区の北側には、宇都宮市民憲章において、「宇都宮市は、二荒の森を中心に栄えてきた町です」と謳われているように、宇都宮市の顔であり、ランドマークであり、シンボルである二荒山神社が存在する。
 現在、馬場通り中央地区(宇都宮市馬場通り4丁目、二荒山神社参道東側)は、既存の建物が取り壊され、大通りから神社の森を見渡すことができるように、二荒山神社の周辺は、本来「二荒の森」という良好な景観を有している。
 馬場通り西地区に24階建高さ82.5メートルの超高層マンションが建設されれば、8階建高さ38メートルの商業複合ビル建設予定の馬場通り中央地区と同様に、二荒の森がビルの影に覆われてしまい、大通りから、半永久的に緑の森のほとんどを望むことができなくなることはもちろんであるが、何より、両ビルが相まって二荒山神社の境内から南側へ見渡す風景が一変する。すなわち、平成18年7月2日付下野新聞掲載第1回意見広告(資料2)イラスト「境内から」のとおり、24階建超高層マンションは、境内南西側の天空を広範囲にわたって遮り、二荒山神社参拝者に強度の圧迫感・威圧感を与えることになるのである。そのことは、マンション前大通りを歩く者に対しても同様である。
 したがって、24階建超高層マンションの存在が二荒山神社と一体をなす周辺の景観を破壊することは、誰の目にも明らかである。

(2) 公共性の乏しい事業への多額の税金投入
 再開発準備組合は、馬場通り西地区の総事業として、約64億円を見込んでおり、その内、約32億円が補助金(国16億円、栃木県8億円、宇都宮市8億円)の対象となる。
 しかし、馬場通り西地区は、敷地面積約3081uのうち、参道西側に約800uを広場として提供するのみで、24階建超高層マンションは、3階以上が個人の住宅であり、1階・2階もB・C等の私企業の入居に止まる。すなわち、宇都宮市民が自由に行き来できる公共の場所といえるのは、上記参道西側のわずかな広場のみである。
 そして、当該広場の1u当たりの路線価は、374,452円、800uで299,560,000円であるのに、これに対し、32億円を支出するというのは、1u当たり4,000,000円で買うのと同じことになる。
 大部分が全くの私的空間である馬場通り西地区に、32億円もの多額の公金が投入されることには、大きな疑問を抱かざるを得ない。

(3) マンションでにぎわいを創出できるか
 24階建超高層マンションの入居者によって、宇都宮市中心街の人口は、約500人増加する見込みである。
 しかし、宇都宮市中心街の活性化とは、単に中心街の住民を500人程増やすことではなく、宇都宮市民、宇都宮市外の県民、県外観光客を呼び込むことであったはずである。そして、宇都宮市において、広域からの集客性を期待できる貴重な地域の一つが、宇都宮市のシンボルである二荒山神社周辺地域であるところ、マンションにそのような集客性を高める効果がないことは、明らかである。
 展望台もなく、入居者以外が最上階に上がることもできず、誰が住んでいるのかも分からない、全くの私的構造物であるマンションを眺めるために、誰がわざわざ足を運ぶというのか、甚だ疑問である。

(4) 市民の意向を無視した計画
 馬場通り西地区の都市計画決定は、平成18年2月に宇都宮市都市計画審議会(学識経験者、市議会議員及び行政関係者を構成員とする調査審議機関。)の一応の審議を経ている。
 しかし、陳情者らが中心となって平成18年7月2日付下野新聞に掲載した「二荒山神社前24階建82.5メートル超高層マシション建設に反対します」との意見広告(資料2)に対しては、この広告によって、初めてマンション建設計画を知ったという、宇都宮市民の声が数多く寄せられている。
 すなわち、馬場通り西地区は、宇都宮市のシンボルゾーンであるにも関わらず、24階建超高層マンションは、ほとんどの宇都宮市民がその計画を知らないままに建設が進められていると言わざるを得ない。
 二荒山神社は、宇都宮市民の心のよりどころであり、その参道脇の空間は、宇都宮市のなかでも、特に公共性が高い場所である。このような場所の開発が、地権者の事業採算性を第一優先にする観点からのみで進められることは、許されない。

4 陳情者らによる公開質問状の送付とこれに対する栃木県の回答
 陳情者らは、二荒山神社前24階建超高層ビル建設計画を広く、宇都宮市民に知らしめ、その是非についての市民レベルでの議論の発端とすべく、平成18年4月より、陳情者らの提言をまとめた「緊急アピール」(資料3)を行政・議会当局をはじめ、県内経済産業団体、文化団体、市民団体、地元商店街等に約2000部配布した。
 その支援や意見をもとに、同年7月2日、陳情者らは、「緊急アピール」の賛同者とともに、下野新聞に、二荒山神社前24階建超高層ビル建設計画反対を表明する全員意見広告を掲載した(資料2)。これ以降、二荒山神社前24階建超高層ビル建設計画を知った人々から、陳情者らに共感するとの意見が連日多数寄せられるようになり、建設反対署名者も、既に、1万1000名を超え、現在も増加し続けている(資料4)。
 同月13日、陳情者らは、宇都宮市長及び栃木県知事宛に、二荒山神社前24階建超高層ビル建設計画に関する@景観問題、A税金投入問題、B中心市街地の活性化問題等につき、質問状を送付した(資料5)。
 8月11日、陳情者らに対し、栃木県は、「県は、二荒山神社は宇都宮市中心部のシンボルのひとつであると考えております。歴史、景観に配慮しながら都市を整備していくことは必要と考えます。」としながらも、市街地開発事業については「都市開発法第17条各号のいずれにも該当しないと認めるときは、認可しなければならない。」との文書を送付した(資料6)。この栃木県からの文書は、陳情者らが指摘した二荒山神社前24階建超高層ビル建設計画の問題点につき、栃木県としての見解を一切示していないのであって、県はこの問題につき、無関心であるとの非難は免れないところである。
 なお、同日、宇都宮市からは、二荒山神社前24階建超高層ビル建設計画を「歴史的資源にも十分配慮し」た事業と評価し、再開発事業準備組合を支援するとの回答があった(資料7)。

5 事業計画が法令に違反すること
 このような栃木県の対応から明らかなように、後日、再開発準備組合から提出される宇都宮馬場通り西地区再開発事業計画についても、栃木県は、景観問題等につき一切検討することなく、形式的審査のみを行って、同計画を認可してしまうおそれが大きい。
 そこで、陳情者らは、以下(1)から(4)の法令違反を指摘し、栃木県に対し、事業計画案を景観保全等の観点から、実質的に審議するよう求める。

(1) 都市計画決定の無効
 24階建超高層マンション建設を可能にするために、建築物の容積率の最高限度700パーセント以下と変更した宇都宮市の都市計画決定(資料8)は、その上位計画である宇都宮市都心部グランドデザイン(資料9、平成14年8月宇都宮市策定)に反するから無効である。
 宇都宮市は、宇都宮市都心部グランドデザイン10頁において、二荒山神社と宇都宮城祉公園を結ぶ歴史軸周辺を「センターコア」とし、「中核都市にふさわしい商業地の形成」、「市民交流の拠点づくり」等を掲げ、センターコアの周辺にあたる「都心部居住地区」とは明確に区別している。すなわち、馬場通り西地区には、住宅機能は、全く含まれていない。
 にもかかわらず、宇都宮市は、馬場通り西地区への24階建超高層マンション建設を推進する都市計画決定をしており、この決定は、「宇都宮市グランドデザイン」に真っ向から反する。
 建築物の容積率の最高限度700パーセント以下とする都市計画決定が無効であれば、同地区の建築物の容積率の最高限度は、従前どおり、650パ一セント以下のままであるから、同地区に82.5メートルもの高層建築物(容積率約700パーセント)を建築する事業計画は、都市計画に適合しない。
 なお、宇都宮市は、宇都宮市都心部グランドデザイン7頁「(1)都心核構想 ○センターコア 賑わいの拠点として、「商業機能」、「交通機能」の充実を中心に、新たに、「市民サービス機能」、「住居機能」等の集積を図る。」との一言があることをもって、馬場通り西地区への24階建超高層マンション建設は、宇都宮市都心部グランドデザインに沿うとしている。しかし、上記のとおり、宇都宮市都心部グランドデザイン10・11頁の「C都心部の地区別整備の方針」は、「(1)センターコア」と「(4)都心部居住地区」をはっきりと区別し、上記「センターコア」の整備方針には、住居機能についての言及は一切ないことや、12頁の都心部地区図の「都心部居住地区」には、馬場通り西地区が含まれていないことからも明らかなように、「宇都宮市グランドデザイン」には、二荒山神社鳥居脇に住居機能を整備する方針はなかったのであり、宇都宮市の上記主張は、馬場通り西地区への24階建超高層マンション建設を正当化するためのこじつけである。

(2) 栃木県景観条例違反
 栃木県は、「栃木県景観条例」第18条(大規模行為景観形成基準)において、次のとおり定めた(資料10)。
[基本的事項]
 ・地域の特性を考慮し、その地域の基調となる景観と調和させること
 ・見る位置(視点場)と見られる対象(視対象)との関係を考慮した景観形成に努めること
[位置及び規模]
 ・地域の主要な眺望点からの眺望を妨げない位置及び規模とすること
 ・道路等公共的な空間に接する部分は、歩行者等に対する圧迫感、威圧感等を緩和するような位置及び規模とすること
 ・歴史的な建造物等に近接する場合は、歴史的景観の保全に配慮した位置及び規模とすること
 しかし、二荒山神社前の24階建超高層マンション建設計画が上記基準に真っ向から抵触することは明らかである。

(3) 都市再開発法第3条違反(資料11)
 ア 同条は、3号において、「当該区域内の土地利用が細分されていること等により、当該区域内の土地の利用状況が著しく不健全であること」を第一種市街地再開発事業の施行区域の要件としているが、約3000uの面積を有する馬場通り西地区の地権者は、僅か5名(市街地再開発組合を結成できる最低限の人数にあたる。同法11条)しかいないのであって、同地区につき、土地の利用が細分化されているとは言えない。
 イ 同条は、4号において、「当該区域内の土地の高度利用を図ることが、当該都市の機能の更新に貢献すること」も第一種市街地再開発事業の施行区域の要件としているが、前述のように、マンション建設では中心街の賑わいは戻らないばかりか、マンションの駐車場に出入りする自動車で大通りが現状以上に渋滞することは明らかであり、宇都宮市が提案するLRT構想とも矛盾するのであって、24階建超高層マンションは、かえって都市の機能を後退させる。

(4) 景観利益の侵害
 国立高層マンション訴訟上告審判決(最高裁平成18年3月30日第一小法廷判決、資料12)は、「良好な景観に近接する地域内に居住し、その恵沢を日常的に享受している者は、良好な景観が有する客観的な価値の侵害に対して密接な利害関係を有するものというべきであり、これらの者が有する良好な景観の恵沢を享受する利益(以下「景観利益」という。)は、法律上保護に値する」とし、この利益が侵害された場合にも、不法行為(民法709条)が成立しうると判断した。また、「ある行為が景観利益に対する違法な侵害に当たるといえるためには、(中略)公序良俗や権利の濫用に該当するものであるなど、侵害行為の態様や程度の面において社会的に容認された行為として相当を欠くことが求められる」とした。 本件事業計画は、上記のとおり、都市計画、栃木県景観条例、都市再開発法等の規制に違反するばかりりでなく、地権者の事業採算性が第一優先され、公共的価値に乏しい本件マンション開発事業は、土地所有権の濫用にあたり、二荒山神社を初めとする周辺住民の公益的景観利益を侵害することは明らかである。

6 まとめ
 宇都宮市は、再開発事業準備組合とともに24階建超高層マンション建設実現向けて、市民の理解を得ようと積極的に働きかけを行っており、同計画は、宇都宮市主導の計画と言っても過言ではない。本来、公の立場から、民間企業による乱開発を制止すべき宇都宮市が、二荒山神社前の景観破壊行為に加担しているのである。
 栃木県も、同事業計画につき、上記各種問題点を検討せず、認可を与えれば、宇都宮市と同罪である。
 陳情者らは、栃木県の英断により、宇都宮市及び再開発事業準備組合の暴挙が阻止されることを強く願うものである。

(添付資料1〜14の添付資料は事務局保管)

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