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請願・陳情 議決結果一覧

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請願・陳情名

第82号 (平成18年) 要請(出資法及び貸金業規制法に関すること)

受理年月日

受理日:平成18年9月18日

付託委員会

付託委員会:経済企業委員会
付託日:平成18年9月29日

紹介議員

議決結果

議決日:平成18年10月10日
議決結果:採択

内容

 栃木県議会において、国会及び政府に対し『出資の受け入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律』(以下、「出資法」という。)及び『貸金業の規制等に関する法律』(以下、「貸金業規制法」という。)について、下記事項の改正を求める「意見書」の提出について採択いただくようご要請申し上げます。
                記
1.要請内容
@「出資法第5条」の上限金利を利息制限法第1条の制限金利まで引き下げること

【出資法第5条】
(第2項)2…金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年29.2%を超える割合による利息の契約をしたときは、5年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併加する。
(第7項)金銭の貸付けを行う者がその貸付けに関し受ける金銭は、礼金、割引料、調査料その他何らの名義をもってするを問わず、利息とみなして第一項及び第二項の規定を適用する。貸し付けられた金銭について支払いを受領し、又は要求する者が、その受領又は要求に関し受ける元本以外の金銭についても、同様に利息とみなして第三項の規定を適用する。
【利息制限法第1条】
 金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率より計算した金額を超えるときは、その超過部分につき無効とする。
元本が十万円未満の場合年二割
元本が十万円以上百万円未満の場合年一割八分
元本が百万円以上の場合年一割五分

A「貸金業規制法第43条」のいわゆる「みなし弁済」規定を撤廃すること

【「みなし弁済」規定の概要】
 利息制限法の制限金利を超えるとその金利は無効であるが罰則はない。一方、出資法の上限金利を超えると刑事罰が科される。多くの貸金業者は、利息制限法の制限金利以上で出資法上限金利以下、いわゆる「グレーゾーン」で営業している。この「グレーゾーン」部分の利息については、貸金業者からの支払請求は出来ないが、貸金業者が貸付の際に貸金業規制法17条書面(契約書面)や18条書面(受取証書)を交付するなどの要件を満たしかつ「債務者が利息として任意に支払った」場合には、利息制限法の制限金利を超えていても有効な弁済とみなされる。

B出資法における、日賦貸金業者及び電話担保金融に対する特例金利を廃止すること

2.要請の理由
(1)平成15年7月、ヤミ金融対策法(貸金業規制法及び出資法の一部を改正する法律)が制定され、その際、出資法の上限金利は同法施行後3年を目途に見直すこととされました。その具体的な時期が平成19年1月と見込まれることから、法改正にむけていまが重要な時期にあるといえます。
(2)平成15年に24万件を突破した自己破産申立件数は、平成16年には僅かに減少したものの依然として高水準にあることに変わりなく、また、法律により債務額を減額確定し返済する個人債務者再生手続きは年々増加の傾向にあり、債務者が債権者と個別に交渉する任意整理事件も急増しています。このような債務整理手続きを必要とする多重債務者は200万人にも及ぶと推測されるなか、経済苦による自殺は警察庁の統計によれば平成16年度は7,947名にのぼり、さらにこの多重債務者問題がホームレス・離婚・配偶者間暴力・児童虐待・校内暴力・凶悪犯罪等の様々な事件や被害を引き起こす要因になることが多く、もはや深刻な社会間題であると言わざるを得ません。
(3)多重債務間題の大きな原因はクレジット(キャッシング)・サラ金・商工ローン業者等の高金利にあります。わが国の公定歩合が年0.1%、銀行の貸出平均金利が2%以下という超低金利時代において、出資法の上限金利たる年29.2%は銀行貸出金利の10倍以上の大変な高金利です。この高金利で一旦借入れをしてしまえば、一般の市民(消費者)であれば誰でも家計を圧迫し返済困難に陥ってしまうことは目に見えています。金融広報中央委員会が実施した世論調査によれば、平成17年における貯蓄のない世帯の比率は全体の23.8%を占め、このことは生活に余裕資金のない世帯が突発的な資金需要に対応できずに出資法の上限に近い高金利に手を出せば、たちまち生活が立ち行かなくなる現実を窺わせるものです。
(4)ところが、貸金業者側は出資法の上限金利を年40.004%から年29.2%に引き下げたことが、ヤミ金を跋扈させる原因になったと説き、出資法の上限金利の引き上げ若しくは上限金利そのものの撤廃を金融庁の「懇談会」で主張したり、議員要請をはじめ政治的攻略の動きを強めています。しかしながら、ヤミ金が跋扈したのは、法外な高金利と取り立てによる卑劣な犯罪であるにも係らず、捕まることがなく儲かったからです。出資法の上限金利の高低に関わらず、法を無視する者に対しては警察が総力をあげて取り締まるべきであり、「ヤミ金が増えると困るから金利規制を緩めましょう」という主張は、ヤミ金合法化につながるもので論理の摩り替えというべきです。
(5)多重債務問題の抜本的解決のためには、勤務先の倒産、リストラ、営業不振による給料の減額等、厳しい経済環境のなかで、県民・市民が安心して生活できる健全な消費者信用市場の構築こそ重要です。家計の破綻が容易に想像できる高金利を是正させ、少なくとも出資法の上限金利を利息制限法の制限金利まで早急に引き下げる必要があることは明白です。
(6)一方、貸金業規制法43条は、債務者が利息制限法の制限利息を超える利息を「任意に」支払った場合に、貸金業者が法定の契約書面及び受領書面を適切に交付していた場合に限り、これを有効な利息の支払いと「みなす」と規定しています。いわゆる「みなし弁済」と呼ばれる規定です。しかし、厳格な条件を満たした場合に認められるとはいえ、この利息制限法の例外を認める「みなし弁済」規定の存在こそ貸金業者の利息制限法に違反する金利での貸付けを助長し、多くの多重債務者を生み出しているのです。すなわち、強行法規である利息制限法の制限金利が年15〜20%とされ、これを超えた利息は民事上無効で返済義務がないにも関わらず、出資法の上限を超えない限り罰則の対象とならないことから、大手を含む殆ど全ての貸金業者は年25〜29%の約定金利で貸付けを行っているのです。そもそも民事上無効であるはずの高金利による営業が許されていること自体が問題であり、このことが多重債務問題の最大の要因であるといっても過言ではありません。現実には上記の「みなし弁済」を認める条件を満たした営業を行っている貸金業者は皆無に等しく、債務整理や訴訟においては利息制限法に基づいて債務額を確定し、過払金があれば債務者に返還することが実務の常識でさえあります。また、利息制限法は債務者保護をその立法趣旨とする強制法規であり、その例外として暴利を認めるような貸金業規制法43条は、その立法趣旨に反し、また「資金需要者の利益の保護を図る」という貸金業規制法自体の目的規定とも相容れないものといえます。
(7)司法の場においては、昨年12月15日、最高裁判所は本来無効であるグレーゾーン金利が有効と認められる例外について「厳格に解釈すべき」との判断を示し、本年1月13日には、「明らかな強制だけではなく、事実上の強制があった場合も、上限を超えた分の利息の支払いは無効」とする画期的な判断を示しました。両判決の意味するところは、あらゆる貸金業者の貸付けに「みなし弁済」が成立しないということであり、もはや、貸金業規制法43条の存続意義は認められないと言えます。従いまして、「みなし弁済」が成立しない以上、貸金業規制法43条は出資法の上限金利の引き下げに伴い撤廃すべきであると考えます。
(8)同様に、出資法附則に定められている日賦貸金業者(日掛け金融)については、その返済手段が多様化している今日において、集金による毎日の返済という形態の必要性が失われていること、また、厳格に要件を守らず違反行為が横行し悪質な取り立ての温床にもなっていること等から、その存在意義自体を認める必要性はなく、日賦貸金業者に認められている年54.75%という特例金利は直ちに廃止すべきです。

(意見書案)
出資法の上限金利の引き下げ等、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」及び「貸金業の規制等に関する法律」の改正を求める意見書
                           平成18年 月 目
衆議院議長 殿
参議院議長 殿
内閣総理大臣 殿
総務大臣 殿
法務大臣 殿
金融担当大臣 殿
                             栃木県議会議長
現在、公定歩合が年0.10%、銀行の貸出平均金利が年2%以下という超低金利時代のわが国において、消費者金融、信販会杜、商工ローン等の貸金業者は、利息制限法が定める制限金利(年15〜20%)でさえ高金利と言えるところ、貸金業規制法43条の要件遵守を条件に、出資法の上限金利たる年29.2%(日賦貸金業者及び電話担保金融は、年54.75%)という超高金利での営業をしています(所謂「みなし弁済」)。
 先般、最高裁判所は、貸金業者のほとんどが採用する「リボルビング式」の貸付けに「みなし弁済」の適用はないと判示し(最判平成17年12月15目)、強行にみなし弁済の成立を主張し続けてきた株式会社シティズに対してもその主張を退けたところです(最判平成18年1月13目)。両判決の意味するところは、あらゆる貸金業者の貸付けに「みなし弁済」が成立しないということであり、もはや、貸金業規制法43条の存続意義は認められないと言えます。
 「みなし弁済」が成立しない以上、利息制限法の制限金利を超えた部分は「払う必要のない利息」であるにもかかわらず、貸金業者は、両判決の後も利息制限法に定める所定金利に改めないばかりか、法を知らない債務者に何らの説明をすることもなく、本来無効の利息を違法に受け続けています。
 一方、長引く経済不況を背景に、全国では債務整理を必要とする多重債務者が200万人にも及ぶと推測され、これだけの数の債務者が「払う必要のない利息」のために苦しめられ、自己破産・夜逃げ・一家離散・校内暴力・自殺・強盗や殺人等の犯罪といった社会間題を引き起こすに至っているのです。また、平成17年における金融広報中央委員会の調査では、「貯蓄を保有していない世帯」の比率が全体の23.8%を占めています。余裕資金のない中で、突発的な出費に対応するために高金利の貸金業者を利用した世帯では、返済に窮するだけでなく、子供の学費や税金、社会保険料等の滞納が常態化しています。
 このような状況のもとで、平成19年1月には出資法の上限金利を見直す時期を迎えます。国においては、貸金業規制法43条の存続意義がなくなったいま、同条を廃止することに加え、住民が安心して経済生活を送ることができる適正な金利規制など、下記のとおり法改正を行うよう強く要望するものです。
                記
1.下記のとおり、出資法及び貸金業規制法を改正すること。
 (1)出資法第5条の上限金利を、利息制限法第1条の制限金利まで引き下げること
 (2)貸金業規制法43条のいわゆる「みなし弁済」規定を撤廃すること
 (3)出資法における、日賦貸金業者及び電話担保金融に対する特例金利を廃止すること

 以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。

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