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第42号(平成12年) A理事長による患者紹介依頼状に対する厳正な行政監督を求める陳情

受理番号 第42号
(平成12年)
受理年月日 平成12年8月29日
付託委員会 厚生環境委員会 委員会付託年月日 平成12年9月28日
議決結果 不採択 議決年月日 平成12年10月6日
紹介議員
第42号(平成12年)
  A理事長による患者紹介依頼状に対する厳正な行政監督を求める陳情

 趣旨
 A理事長による患者紹介依頼状は、医の倫理に真っ向から挑戦し国民の医療不信を増幅するだけでなく、患者、国民の保護、適切な医療を受ける機会を保障することを目的とした医事諸法規に違反する。行政当局による厳正な指導、監督が行われるよう県議会による監視を求める。
 事項
 A氏は、「御紹介頂きました患者さんが入院した場合には心ばかりの品を半期ごとに送らせて頂きます」等とした患者紹介依頼状を他病院に送っている。これは、医師間での謝礼がらみの患者のやり取りの存在を思わせるもので、書状の内容が医の倫理に真っ向から挑戦し国民の医療不信を増幅するだけでなく、かかる依頼状の送付行為は、重大な医師法、医療法違反に当たる。一般の営利的職業の場合は真実の広告は自由であるが、医師、弁護士などは非営利的な職業として、国民の保護のため、厳しい広告の制限が法律上課せられている。あん摩はりきゅう師など、営利的と、非営利的の中間に位置する職業にあり、社会的に不遇な立場にある人々もこの法が厳格に適用されているのに、社会的、経済的地位にあり恵まれた立場にある医師に厳正な法適用がなされないなら社会的公正の原理に反する。行政当局による厳正な指導、監督が行われるよう県議会による監視・監督を求める。

 近年、マスコミなどで信じがたい医療ミスや医師、病院の不祥事が数多く報道されておりますが、県議会におかれても医療機関に対し行政による適切な指導が行われるよう求めておられることと思います。私は、医療機関の不正を告発した匿名文書を入手し、本年七月上旬、県医事厚生課にお届けし、調査及び善処方を依頼しました。しかし、約二カ月を経過するも何らかの対応がとられた気配もなく、中間報告もありませんので、ここに正式の文書にて県当局に照会するとともに、県議会に陳情し、行政当局による厳正な法の適用が行われるよう議会による監視、監督を要請するものです。
 事実関係を慎重に調査のうえ対応を図ろうとする県当局の姿勢に反対するものではありません。しかし、六枚の告発文書のうちの一枚、すなわちA氏名義の書状問題については、事実関係について確認することがそれほど困難なものではなく、法解釈の問題についても判例も確立しており、要は行政のやる気次第と考えます。
 私は、小山市A氏から他病院に送られた書状問題について、小山地区医師会に質問状を送りました。当該地区医師会の対応は、問題の本質をはぐらかした極めて不誠実なものであり、一般人の倫理感覚から隔絶したものでしたが、A氏名義で送られた当該書状が、A氏本人が出したものであることをA氏自身が医師会への回答で認めたことを確認しました。
 当該書状は、他病院医師に対し、「御紹介頂きました患者さんが入院した場合にはこころばかりの品を半期ごとに送らせて頂きますので」(患者さんの)「御紹介をお願いします。」などとあり、大きさは便せん大、手書き文書やワープロ文書ではなく、高級紙に活版印刷されたもののように見えます。私はこの書状を読み、患者をあたかも利権のように扱い、半期ごとの謝礼によって入院患者が取り引きされるのかと、えもいわれぬ病院不信、医療不信に襲われました。この文書を見た多くの人が内容の低劣さに一様に顔をしかめました。営利的職業の者が書いたものを思わせ、医師として品位のかけらも見られません。
 もし公務員に対して利益供与の申込みまたは約束をして請託すれば刑法上の犯罪(刑法百九十八条他)にさえなります。医師は、公務員以上に高い倫理性が要請されるだけでなく、医事法により、公務員以上の厳しい法的規制があります。
 医師法七条二項は、「第四条各号の一に該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあったときは、…その免許を取り消し、又は期間を定めて医業の停止を命ずることができる」としており、同法四条三号には「医事に関し犯罪又は不正の行為のあった者」(不正とは犯罪以外の不正と解釈される)との条項があります。医師間の謝礼による患者の取引は、医師としての品位を損ねること甚だしいし、次に述べる医療法上の不正に当たり、医師免許取り消し、医業停止を定めた条項の二つのいずれにも該当します。また、医師と患者の信頼関係の維持を求める医療法一条の二、「文書その他のいかなる方法によるを問わず…次に掲げる事項を除くほか、これを広告してはならない」とする同法六十九条にも明らかに違反します。さらに、医療法一条の四は、医師に「良質で適切な医療を行う責務」を課していますが、これは患者の保護規定で、医療機関の紹介がもっぱら患者の治療という目的のため行われねばならないことを定めたのであり、まさに当該書状のように医療機関紹介に利得がからむような事態を防ぐことを目的とした規定であります。
 医療法六十九条の広告の制限に関連する判例として、あん摩はりきゅう師広告事件に関する昭和三十六年二月十五日の最高裁判決があります。そこでは、内容が真実の広告でも制限が認められるのは、「患者を吸引するため誇大広告に流れ、大衆を惑わすおそれがあり、その結果患者が適切な医療を受ける機会を失うおそれがある」からだとされております。あん摩はりきゅう師は、医師のような非営利的職業と通常の営利的職業との中間に位置し、社会の底辺の生活を強いられてきたあん摩はりきゅう師まで、医師同様に広告を制限するのは酷ではないかとの意見もありますが、裁判所は患者、国民の保護を優先する考えをとっております。非営利的職業である医師の場合は「もちろん」という解釈となり、この判例は定着し、医業に関する広告制限はますます厳格に適用される傾向にあります。
 A氏書状という動かぬ証拠があり、患者の保護という目的のためには身体の障害等のため底辺の生活を強いられているあん摩はりきゅう師にさえ、広告の制限は厳格に適用されているわけですから、高い収入を保障された特権的地位にある医師に対して行政の目こぼしがあってはなりません。法の厳格な適用が求められます。
 議会による行政への適切な指導監督を求める次第です。
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