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第16号(令和03年) 国に対し「刑事訴訟法の再審規定(再審法)の改正を求める意見書」の提出を求めることに関する陳情書

受理番号 第16号
(令和03年)
受理年月日 令和3年8月5日
付託委員会 県政経営委員会 委員会付託年月日 令和3年9月30日
議決結果 不採択 議決年月日 令和3年10月15日
紹介議員
第16号(令和03年)
  国に対し「刑事訴訟法の再審規定(再審法)の改正を求める意見書」の提出を求めることに関する陳情書

要  旨
1 陳情の趣旨
(1)再審における検察手持ち証拠の開示制度の法制化
(2)再審開始決定に対する検察官の不服申立て(上訴)の禁止を内容とする別紙「刑事訴訟法の再審規定(再審法)の改正を求める意見書(案)」を貴議会において採択され、国へ提出していただきたく陳情いたします。

2陳情の理由
(1)はじめに
   再審は、無実の者が有罪とされた冤罪被害者を救済する最後の砦です。
   犯罪をしていない人が犯罪者として法による制裁を受ける冤罪は、人生を破壊し、人格を否定すると同時に、法制度自体の正当性を失わせるものです。冤罪はあってはならないと誰しも認めることでありながら、後を絶ちません。
   2010年の足利事件に始まり、布川事件、東電OL事件、東住吉事件、松橋(まつばせ)事件に至るまで、重罰事件の再審無罪が続きました。
   2014年、袴田事件の当事者である袴田巖さんが47年ぶりに死刑囚監房から解放されるという歴史的な出来事もありました。
   2020年、湖東記念病院人工呼吸器殺人事件で12年間服役した西山美香さんが再審無罪判決を勝ち取り、マスコミでも大きく報道されました。
   しかし、再審開始が認められて無罪となる過程において、検察側による様々な妨害が立ちはだかっていました。
(2)再審における検察手持ち証拠の全面開示の必要性(陳情の趣旨第1項)第1の問題点は、検察が捜査で集めた証拠を隠匿し、開示しないことです。
   再審請求では、無実を主張する請求人と弁護側から、新規・明白な無罪証拠を提出することが求められます。
   ところが、証拠のほとんどは強制捜査権を持つ警察・検察の手にあるだけでなく、当事者主義の名の下に開示する義務がないとされ、しばしば無罪証拠が隠されたまま、有罪が確定する事例が後を絶ちません。再審で無罪の決め手となった「新証拠」の多くが、当初から警察・検察が隠し持っていました。
   通常審では、公判前整理手続を通じて、不十分ながらも一定の要件で証拠開示が制度化されました。しかし、再審請求審においては証拠開示に関するルールが全くありません。
   その結果、証拠が開示されるか否かは、裁判官の個別判断や検察側の裁量に委ねられることとなり、公平な裁判を受ける権利(日本国憲法第37条)や適正手続(日本国憲法第31条)が踏みにじられています。
   当該実情を踏まえ、2016年に改正された刑事訴訟法附則第9条3項において「政府は、この法律の公布後、必要に応じ、速やかに、再審請求審における証拠の開示・・・について検討を行う」と定められました。
   しかし、改正法の成立から5年が経過しても、再審請求審における証拠開示を制度化の検討が進んでいません。
(3)再審開始決定に対する検察側の不服申立て(上訴)の禁止(陳情の趣旨第2項)
   第2の問題点は、再審公判が開かれるには再審開始決定が確定する必要がありますが、下級審での再審開始決定に対して、検察官による不服申立てが許されていることです。
   大崎事件の当事者である原口アヤ子さん(現在94歳)は、2015年7月に第3次再審請求をした後、2017年6月に再審開始が認められました。しかし、検察側が不服申立てをして、2018年3月に福岡高裁宮崎支部が不服申立てを棄却、それに対し、検察側が最高裁に不服申立てをし、最高裁は2019年6月に検察側の主張を認め、再審開始決定を取り消しました。現在、原口さんは、第4次再審請求をしています。
   袴田さん(現在85歳)は、2008年4月に第2次再審請求をした後、2014年3月に静岡地裁で再審開始が認められ、さらに死刑と拘置の執行の停止を決定、袴田さんは釈放されました。しかし、検察側が不服申立てをし、2018年6月に東京高裁が再審請求を棄却、それに対し、弁護側が最高裁に不服申立てをし、2020年12月に東京高裁決定を取消し、審理を高裁に差し戻しました。2008年に申し立てた再審請求が13年経っても決着していません。
   検察官が公益の代表者という立場に反して、裁判所の再審開始決定にいたずらに逆うことで、長期間にわたり再審公判が受けられない現状がある以上、検察側の不服申立てを禁止すべきです。
   刑訴法の再審の規定は、日本国憲法第39条(二重の危険)を受けて不利益再審の規定を削除しただけで、大正時代の旧刑訴法のままです。現行の再審規定のルーツであるドイツでも、50年以上前に再審開始決定に対する検察側による不服申立て(上訴)を禁止しています。
(4)最後に
   冤罪は、国家による最大の人権侵害です。誰もが冤罪の犠牲となる可能性を孕んでおり、冤罪犠牲者をなくすことは法曹関係者のみならず、私たち市民の社会的課題です。
   そのためには、再審における証拠開示制度の確立、検察側の不服申立て(上訴)を禁止する法律を制定することが必要です。
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