現在位置 :トップページ › 請願・陳情の詳細情報 › アイヌ民族に関する総合的施策確立のため国に審議機関設置を求める意見書の提出について(陳情)
受理番号 | 第19号 (平成19年) |
受理年月日 | 平成19年12月3日 |
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付託委員会 | 県政経営委員会 | 委員会付託年月日 | 平成19年12月13日 |
議決結果 | 採択 | 議決年月日 | 平成20年6月16日 |
紹介議員 | |||
第19号(平成19年) アイヌ民族に関する総合的施策確立のため国に審議機関設置を求める意見書の提出について(陳情) 二十数年前に遡りますが、北海道ウタリ協会の「アイヌ民族に関する法律(案)」の制定要望や北海道の「ウタリ問題懇話会答申」に基づき、国においてアイヌ民族の総合法制定要望を行いました。 その際、同時に全国都府県、政令指定都市への働きかけを行い、多くのご理解、ご支援を賜った結果、文化に特化された「アイヌ文化振興法(略称)」が1997(平成9)年に制定されたところです。 この度、国際連合総会において「先住民族の権利に関する国連宣言」が採択されたことから、北海道知事、北海道議会が再度、この宣言におけるアイヌ民族の位置づけや盛り込まれた権利を審議する審議機関を設置するよう要望書並びに意見書を提出したところです。 つきましては、別添要望書の趣旨をご理解いただき、国に対し同趣旨の意見書を提出していただきたく、貴議会のご配意を賜りますようお願いいたします。 ・要旨 昭和59年5月27日、北海道ウタリ協会総会において、「アイヌ民族に関する法律(案)」を決議し、国に対して新しい法律の制定と「北海道旧土人保護法」の廃止を求め、同年7月、さらに北海道知事及び北海道議会議長に新法実現に向けて協力要請を行った。 その新しい法律の要望骨子は、第一「基本的人権」、第二「参政権」、第三「教育・文化」、第四「農業漁業林業商工業及び労働対策」、第五「民族自立化基金」、第六「審議機関」の六項目を列挙し、抜本的かつ総合的な制度を法的措置により国の責任で確立することであった。 その後、北海道知事の私的諮問機関「北海道ウタリ問題懇話会」の審議を経て、昭和63年、北海道、北海道議会及び北海道ウタリ協会の三者から「アイヌ民族に関する法律」制定が実現されるべく国に要望された。 国では「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」(内閣官房長官の私的懇談会)を設置し、平成8年には立法措置に基づく新しい施策の概要を「アイヌ語やアイヌ伝統文化の保存振興及びアイヌの人々に対する理解の促進を通じ、アイヌの人々の民族的な誇りが尊重される社会の実現と国民文化の一層の発展に資することである」とし、文化振興の推進を柱とした同懇談会報告書が提出された。 しかし、この報告書は、アイヌの先住性、民族性、文化の特色そして我が国の近代化の4点から、アイヌ民族の特質や歴史について述べてはいるが、アイヌの先住性と民族性については個々の記述に止まり、それらを統一する概念としての先住民族については一切言及していない。 また、北海道ウタリ福祉対策については、その成果に一定の評価を与えながらもいわゆる一般施策として実施されていることの限界を指摘し、この実施をもってしてはアイヌの生活向上に十分に応えうるものとは必ずしも言えないと評価している。現在も依拠する法律がないままその施策が進められ、単年度の事業総額は、年々減少の一途をたどっている。 さらに、北海道から移住したアイヌに対しては、不十分とするその対策すらも適用されないという施策の限界、矛盾にも触れられていなかった。 この報告書は、「北海道旧土人保護法」などの廃止と「アイヌ文化振興法」の制定に重きを置いてまとめられており、国際連合の「先住民族の権利に関する国連宣言」などの審議動向や北海道ウタリ福祉対策の充実などは、今後の課題として整理されている。 このことは「アイヌ文化振興法」制定時に、総理大臣、内閣官房長官が北海道ウタリ協会幹部に今後の国連審議の動向を見据えていくことに直接言及され、さらに衆参両内閣委員会が全会派一致で決議した5項目にわたる「アイヌ文化振興法案に対する附帯決議」を併せもって考えると、まさにアイヌ文化振興法制定以降も所要の施策を講ずることへの必要性を認めているのである。 ともあれ、近代国家が形成される過程において、民族としての存在や固有の文化を否定され、生活の場や手段を奪われてきた先住民族の権利を認めることは、今日の国際社会の大きな流れとなっている。 国連では、文化的・宗教的・言語的アイデンティティー、知的財産権をはじめ、教育・情報・労働上の権利、経済的、社会的な権利、土地・資源に関する権利など、先住民族に関するあらゆる権利内容や措置についてまとめられた「先住民族の権利に関する国連宣言」が20年余にわたる審議を終え、この度、総会で圧倒的多数により採択され、日本政府も賛成票を投じたところである。 北海道ウタリ協会は、昭和59年「アイヌ民族に関する法律(案)」の要望内容にあったアイヌ民族の総合的な施策の確立については、この先住民族に関する国際基準といえる権利宣言が採択されていなかったことから「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」をもってしても、国における法制史や国際人権法に照らした根本的な論議を尽くしきっていないと考えている。 これらの経過と宣言採択の機を得て、アイヌ民族を国際連合の審議用語「先住民族(IndigenousPeoples)」の対象であると認めるよう、北海道議会から国に働きかけるとともに、北海道の一地域問題とすることなく改めて国の高いレベルに国連の「第2次世界の先住民の国際十年行動計画」98段落にある国内三者会議(トライパタイトコミティズ)などの審議機関を設置して、新たな法律制定も含めアイヌ民族に係る総合的施策の確立を求める意見書の提出を願うものである。 理由:1 明治時代に日本政府が北海道を植民地と位置づけ、そこに 住むアイヌを先住民族として扱っていたことが明らかにな っている。 ・明治政府は1910年、『外国人の土地所有権に関する法律』 を制定し、植民地における外国人の土地所有を許可しない 法整備を行った。帝国議会における法案審議で、政府は、 北海道が台湾、樺太(サハリン)同様、日本の植民地である 旨を明言している。 ・翌1911年には、アメリカ、ロシア、カナダ(当時イギリス 領)と日本との4カ国間で結ばれた『膃肭獣保護条約』に おいて、「アイヌ」を「アリュート」や「インディアン」 などと同じく『土人(先住民族)』と位置づけ、それらと同 等の狩猟権を認めている。 2 「アイヌ文化振興法」は制定されたが、アイヌ民族に対す る格差是正のため進められている施策は法制化されずに現 在に至っている。「H18北海道アイヌ生活実態調査」でも 生活環境等に依然格差が認められる。 3 内閣官房長官の私的諮問機関『ウタリ問題に関する有識者 懇談会』報告書に<国連等における議論の動向としてアイ ヌの人々の位置づけについては、我が国の実情にあった判 断をしていくことが必要である>とし、今後の課題として いる。 4 「先住民族」の認知等について @国連各条約監視機関からアイヌ民族を先住民族と認め、 その権利を促進するための措置を講ずるよう勧告されて いる。 A札幌地裁「二風谷ダム訴訟」では、国際人権規約B規約 第27条に規定される先住民族であるとし、その「文化享 有権」が認められて結審した。現況、憲法98条2項とそ の判例の関係から考えると公的差別の状況となってい る。 B「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が国連総会で 採択され、国際社会の先住民族に関する人権基準の指標 として確定された。 ○別添「関係添付資料」より ・アイヌの人たちの権利に関する要望書 内閣総理大臣 福田 康夫 様 アイヌの人たちの生活向上関連施策の推進について特段の御配慮を賜り、厚くお礼申し上げます。 北海道では、昭和63年に「アイヌ民族に関する法律」の制定を国に求め、国においては「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」の審議を踏まえ、平成9年5月、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」を制定されました。 この法律により、アイヌ文化の振興とアイヌの伝統等に関する国民の理解の促進については、一定の進展が見られますが、北海道が平成18年度に実施した「アイヌ生活実態調査」によれば、アイヌの人たちの生活保護受給率は平均より高く、また、高校や大学への進学率については平均より低いなど、依然として格差が見られます。 先般、国連において、先住民族の様々な権利に関する国際的な基準となる「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択されました。 北海道としては、これを契機として、これまで以上に、アイヌの人たちの人権が重んじられ、その権利が尊重されるよう願っており、国におかれましては、次の事項について特段の御配慮をお願い申し上げます。 記 1 「先住民族の権利に関する国際連合宣言」におけるアイヌ民族の 位置づけや盛り込まれた権利を審議する機関を設置すること。 2 アイヌの人たちの人権が尊重され、その社会的・経済的地位の向 上が図られるよう国として総合的な施策を確立すること。 平成19年10月 北海道知事 高橋 はるみ ・意見案第4号 「先住民族の権利に関する国際連合宣言」に関する意見書 [19.10.4 蝦名 大也議員ほか4人提出/19.10.5 原案可決] 北海道では、昭和63年「ウタリ問題懇話会」の審議を経て「アイヌ民族に関する法律」の制定を国に求め、国においては、平成8年4月に提出された「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会報告書」を踏まえ、平成9年5月、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」を制定した。 この法律により、アイヌ文化の振興とアイヌの伝統等に関する国民の理解の促進については、一定の進展が見られるものの、アイヌの人たちの人権、教育、生活などについて多くの課題が残されている。 先般、国連において、先住民族のさまざまな権利に関する国際的な基準となる「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択され、政府もこれに賛成している。 よって、国においては、これを機に、この宣言におけるアイヌ民族の位置づけや盛り込まれた権利を審議する機関を設置されるよう要望する。 以上、地方自治法第99条の規定により提出する。 平成 年 月 日 衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 各通 法務大臣 内閣官房長官 北海道議会議長 釣部 勲 |