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第14号(平成19年) 悪質商法被害を助長するクレジットの被害を防止するための割賦販売法の抜本的改正に関する陳情

受理番号 第14号
(平成19年)
受理年月日 平成19年9月13日
付託委員会 生活保健福祉委員会 委員会付託年月日 平成19年9月12日
議決結果 採択 議決年月日 平成19年10月5日
紹介議員
第14号(平成19年)
  悪質商法被害を助長するクレジットの被害を防止するための割賦販売法の抜本的改正に関する陳情

・陳情の趣旨(要旨)
 栃木県議会が、国会及び経済産業省等に対し、悪質商法被害を助長するクレジット被害を防止するため、割賦販売法を以下のとおり抜本的に改正することを求める意見書を提出することを採択していただくよう陳情致します。
              記
1 クレジット事業者の既払金返還責任(無過失共同責任)
 被害の集中する契約書型クレジットについては、クレジットが違法な取引に利用された場合、クレジット事業者は、既払金返還を含む無過失共同責任を負うものとすること。
2 クレジット事業者の不適正与信防止義務
 契約書型及びカード式も含め、クレジット事業者は、違法な取引にクレジットが利用され、顧客に被害が発生することを防ぐための調査等、不適正な与信を防止する義務を負うものとすること。
3 過剰与信防止義務
 クレジット事業者に、過剰与信を防止するための調査義務等を明記し、さらに過剰与信防止義務違反については、民事効を認める等、同義務が実効性のあるものとすること。
4 契約書型クレジットに関する規制強化
 契約書型クレジットについて、カード式同様登録制度を導入し、且つ契約書面交付義務を明記すること。
5 指定商品(権利・役務)制及び割賦要件の廃止
 原則として、指定商品(権利・役務)制及び割賦要件を廃止し、支障のある取引については、ネガティブリストにより対応するものとすること。

・陳情の理由
1 契約書型クレジットに被害が集中一現行法の不備
 近時、住宅リフォームや寝具、呉服、貴金属などの次々販売をはじめ、消費者の資力等を無視した悪質商法被害が大きな社会問題となっているが、これらの被害は、クレジットカードを利用せず、契約書を用いる個品割賦購入あっせん取引(以下「契約書型クレジット」という)に集中している。
 このような被害が発生する背景としては、クレジットシステムが、(1)商品販売と代金回収を分離するシステムであり、顧客の支払能力を無視した販売行為を助長する危険性を有していること(販売店は即時クレジット会社から代金の支払を受けることができる)や、(2)クレジット会社の利益は、販売店からの契約によってもたらされるので、クレジット会社が、不正な勧誘行為等を行わないよう販売店を管理等することは期待できないことなど構造的な危険性を有しているにも関わらず、現行割賦販売法(以下「現行法」という)には、以下のとおり、クレジット会社が不適正な与信を防止する動機付けとなる規定が存在しないことが指摘されている。
2 抗弁対抗規定の限界一無過失共同責任規定の導入
 現行法の抗弁対抗規定(法30条の4ほか)は、クレジット会社からの支払請求を拒否するにとどまり、同規定に基づき、既払金の返還請求までは認められないとされる。
 その結果、クレジット会社には、加盟店の不正を発見したとしても、直ちに加盟店契約を打ち切らずに、できる限り既払金額を増やそうとする誤ったインセンティブが働いてしまい、それが、悪質な加盟店による被害の増大に結びついてしまうことになる。
 社会問題となったダンシングモニター商法事件、アイディック節電器事件などは、まさに、上記問題点が具現化した例である。
 こうした問題点に対しては、行政規制の強化や、業界の自主規制により対処すべきであるとの意見も存在する。しかしながら、行政規制や自主規制のみでは効果がないことは、例えば、特定商取引法は、行政規制等が明記されているが、それでも依然として悪質販売業者が後を絶たないことからも明らかである。
 そこで、現行法の支払拒絶に加え、クレジット会社の不適正与信防止義務を徹底する動機付けとするため及び被害の回復という観点か ら、既払金の返還にまで拡大した民事効の導入が不可欠である。
 そして、その規定については、以下のとおりであるから、無過失共同責任(販売契約が消滅すれば、当然にクレジット契約も消滅し、クレジット事業者は、既払金を返還する)とすべきである。
 @過失責任とすると、クレジット会社・加盟店間という内部関係(加 盟店管理責任を怠ったこと)を立証しなければならないこと、加盟 店管理責任が指摘された大規模クレジット被害事件は解決までに平均5年程度にも及んでいること(裁判の長期化)、その一方で、クレ ジット被害事件における一人当たりの平均契約金額は約84万円であ ることからすれば、いわゆる泣き寝入りが増加する恐れがあること。
 Aクレジット会社は自らが構築したシステムにより、利益を得てい るのだから、システムにより損害が発生した場合はその損害を賠償することが妥当であること。
 Bクレジット契約は、販売契約における代金相当額をクレジット事業者が立替払いすることを目的とする契約である。したがって、購入者は、販売契約が消滅すれば、契約目的を失ったクレジット契約 についても消滅すると期待するのが自然であること。
 なお、イギリスにおいては、既に30年以上前に同規定が導入されているところ、クレジット取引は安全性を有するものとしての地位を確立するに至り、同規定導入後はその取引高が増加しているとの報告もなされている。
 したがって、同規定の導入はクレジット取引の阻害・抑圧ではなく、むしろ、クレジットの安全性・信頼性を高め、クレジット取引の発展に繋がることが期待されるのだから、経済的側面からの要請とも一致する。
3 行為規制
 現行法には、クレジット会社に対し、不適正与信を防止する義務規定は存在せず、行政庁がいわゆる加盟店管理通達として、昭和57年からこれまで複数回にわたり、クレジット業界に対し、その要請を行ってきたに過ぎない。
 また、契約書型クレジットについては、開業にあたり登録等も必要でないほか(総合式・リボルビング方式の場合は登録制)、契約書面の交付義務等もなく、いわば“野放し状態"といっても過言ではない状況である。
 そこで、契約書型についても登録制を導入するとともに、契約書面交付義務をクレジット会社にも課すべきである。
 さらに、前述のとおり、クレジットシステムの構造的危険性については、契約書型もカード式も同様であることや、近年は、カード方式を利用した悪質商法被害も発生しているところであるから、契約書型及びカード式も含め、クレジット事業者は、違法な取引にクレジットが利用され、顧客に被害が発生することを防ぐための調査等、不適正な与信を防止する義務を負うものとすべきである。
4 過剰与信防止義務
 現行法第38条は、信用情報機関の利用等により、支払能力を超えると認められるクレジット契約を行わないようにしなければならないと規定するが、同条は訓示規定と解されていること、信用情報機関には登録されていない取引があること、虚偽の情報が登録されている場合があるなど、その信頼性にも問題があるため、同条が過剰与信防止のために機能しているとは言い難い。
 そこで、消費生活への影響も十分に考慮しながら、貸金業法に規定される、いわゆる総量規制の導入や違反した場合の民事効の導入等、実行性ある過剰与信防止規定を定めるべきである。
 また、信用情報機関についても、目的達成に必要な整備を行うべきである。
5 割賦要件・指定商品(権利・役務)制の存在
 現行法は、「2ヶ月以上の期間にわたり、かつ、3回以上の分割」という割賦要件及び、同法の政令で定められた指定商品(権利・役務)に該当する取引を同法の対象とする。
 このため、例えば、夏・冬ボーナス2回払い、半年後一括払いという支払条件では同法は適用されないし(年金受給者のケースで実際にこれら支払条件となっていた事例がある)、指定商品(権利・役務)外の取引の場合も同様に同法は適用されないことになる。
 したがって、こうした要件が悪質業者の脱法的手段に繋がることから鑑みると、割賦要件・指定商品(権利・役務)については、基本的には廃止の方向で検討することが望ましいものと思われる。
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